2016/12/11

魚の捕り方

Kuvruq(クブラック)、すなわち網を使って魚を取る方法について。

海岸に置いた刺し網
ポイントホープの海での網を使った漁は、海岸に刺網(さしあみ)を仕掛け、海岸に沿って移動するサケやマスを捕獲する漁である。

この漁は海から完全に氷の無くなった6月下旬から8月にかけて行われており、6月頃、漁の初期は北上するサケマス、8月は南下する太ったマス(ホッキョクイワナ)が捕れる。
使用する刺網は、目の大きさ15センチ程度、長さ20メートルほどの網。
 かつては自分で編んでいたそうだが、現在は市販の網を使用している。

網の設置方法
波打ち際近くに、重りを海側、浮きを陸側にして網を広げる(写真参照)。

重り。これはコンクリート製
海中に沈めるアンカー代わりの重りを用意する。
写真のものはコンクリート製だが、土嚢袋や麻袋に海岸の小石を詰めたものも使っている。
この重りには、シャックル(U字形の連結金具)が縛り付けてあり、網の長さの3倍程度のロープが通してある。このロープは、端同士が結んであり、大きな輪となっている。


網を沖へ送る棒

重りを沖へと送るための棒。
2X4材を釘やネジで繋いだもので、長さはロープより少し短い程度。
先端部には重りを引っ掛ける切り欠きとと、ブイが付いている。
このブイは重りを沖に送る際、重りが沈んでしまわないようにするためのもので、ポリタンクやポリエチレンの樽など、浮力のあるものであれば何でも使用する。

ちなみにこの棒、普段は海岸に置きっぱなしで、海岸のあちこちに置いてある(それぞれの棒に所有者がある)。
初めてこれを見たときは、これが一体何なのか、全く想像がつかなかった。


切り欠きに重りを引っ掛ける
先端の切り欠きに重りを引っ掛け、重りに付いたロープを棒に沿って引き延ばす。
 1人は水際近くに、足をロープの輪の中に入れて立つ。これはロープだけが海の中へ行ってしまわないようにしておくため。
もう1人は棒の陸側の端に立つ。





棒とともに重りを沖へと送り出す。

準備が整ったら、陸側の人間が棒を持って海に向かって押す。
 この時、ある程度の速度で、さらにその速度を保ち続けないと、重りが途中で海底に落下してしまう。
海側の人間は、棒が海岸から垂直に沖に向かうように手を添えて調整する。

陸の人間が水際までたどり着いたなら、そこで棒を少し引くと、棒から重りは落ち、海底へと落下する。
棒はこれで用済みとなるので、陸上へ引き上げる。

ロープの末端を網に結ぶ
ロープの大半は重りとともに水の中。ロープの端の結び目が手元近くにある。
この結び目を、網の手前側の端に結び付ける。 向こう側の端は海岸に杭を打ち込んで、そこに結び付ける。







網は完全に水の中へ。
左のロープを引くと、網が上がってくる。
ロープの片方を引けば、網の手間側の端は沖の重りへと引かれていく。
網には上部に浮き、下部に重りがあるため、水中で垂直に立ち上がる。

 魚がやってくるのを待つ。
 魚がかかると浮きがビクビクと動く。
 群れがやって来たなら、その群れが網に向かうように大量の小石を投げ込む。

網に魚が掛かったなら、片方のロープを引き、網を海岸へと引き上げ、魚を回収。
その後、再び網を海へと入れ、漁を続ける。

6月下旬、その年初めての漁では、マスが2尾。
サケマスのほか、海底にいる全長20センチほどのカレイや、ニシンが網に引っかかって捕れることもある。ニシンは食用になる。
ある時、このカレイを持ち帰り、煮付けを作ったことがあるが、気持ち悪がって誰も食べようとしなかった。
このカレイ、体表に硬い石のような鱗があり、 皮を剥ごうとして、指先が切り傷だらけになってしまった。