これは暴挙というか愚挙というのか。個人的には快挙だと思っているのですが、ポイントホープのクジラ猟の写真を見ながらヴィーガン料理を食べよう、という無謀なお話会が開催されます。
ちなみにヴィーガン料理とは動物性たんぱく質を一切使わない野菜だけを使った料理のことです。ベジタリアンの中でも、最も厳格な部類。
それとクジラがどうつながるのか? ええ、つながりません。でもやります。
日時:2014年9月28日(日)17時~20時
場所:minacha-yam (京王線西調布駅徒歩10分)
定員20名ですので、お早めのご予約がお勧めです。
詳細はこちら。
http://minachayam.exblog.jp/22852025/
2014/09/02
2014/08/20
イベントのお知らせ
五島列島は行ったことがありませんし、なんのつながりもありませんでしたが、2月の海旅一座長崎巡業の関係で、ちょっとだけつながり、その結果、クジラ猟のお話しをさせて頂くこととなりました。
と申しましても五島でやるのではなく、会場は新宿です。
当日は五島出身の方の歌やバリのダンスなどもございます。
ご興味ございましたら、是非。
詳細は以下をご覧ください。
http://tayutau510.blog.fc2.com/blog-entry-166.html
と申しましても五島でやるのではなく、会場は新宿です。
当日は五島出身の方の歌やバリのダンスなどもございます。
ご興味ございましたら、是非。
詳細は以下をご覧ください。
http://tayutau510.blog.fc2.com/blog-entry-166.html
2014/08/06
DVD販売のお知らせ
(有)海工房代表の門田修さんのご好意により、1976年に東京12チャンネル(現「テレビ東京」)で放映された「酷寒!零下40度 アラスカの鯨狩り」のDVDを販売することとなりました。
このDVDは、1976年にポイントホープのクジラ猟の様子を取材した大変貴重な映像で、当時の様子が克明に記録されています。
2014年現在のクジラ猟とはだいぶ様子が異なっていることもあり、ただDVDだけお送りしても面白くもないので、近年のポイントホープの状況を踏まえた、自分なりに映像を解説した小冊子もお付けします。
なお、1976年当時の16mmフィルムの映像を単純にDVD化しただけですので、画質はそれなりのものと思って下さい。
このDVDは、1976年にポイントホープのクジラ猟の様子を取材した大変貴重な映像で、当時の様子が克明に記録されています。
2014年現在のクジラ猟とはだいぶ様子が異なっていることもあり、ただDVDだけお送りしても面白くもないので、近年のポイントホープの状況を踏まえた、自分なりに映像を解説した小冊子もお付けします。
なお、1976年当時の16mmフィルムの映像を単純にDVD化しただけですので、画質はそれなりのものと思って下さい。
料金は送料込み1枚2,500円。2枚以上は1枚2,300円です(発送先が国外の場合はご相談ください)。
支払い方法は商品発送時に案内を同封いたします。
以下の情報を RXI01766@nifty.ne.jp までお送りください(いただいた個人情報は、今回のDVD発送以外には使用いたしません)。
郵便番号
住所
氏名
電話番号
必要枚数
※8月中に発送予定ですが、色々立て込んでおりまして、遅くなったら申し訳ありません。
支払い方法は商品発送時に案内を同封いたします。
以下の情報を RXI01766@nifty.ne.jp までお送りください(いただいた個人情報は、今回のDVD発送以外には使用いたしません)。
郵便番号
住所
氏名
電話番号
必要枚数
※8月中に発送予定ですが、色々立て込んでおりまして、遅くなったら申し訳ありません。
2014/05/02
寿司
ポイントホープで一番古い友人の一人、Eが病気治療のためアンカレジに滞在中とのことで、日本からポイントホープへ向かう途中、彼女が泊まっているホテルを訪ねた(退院してホテルから通院している)。
ドアをノックすると、まるで子どものように泣きながら現れた彼女。
いつも気丈で元気な彼女がおいおい泣いている姿を見ていると、とても不安になってしまう。
「ねえ、泣かないでよ」
ハグしたまま泣き続けるE。再会できた事が、よほど嬉しかったのか。
Eの巨体をハグしながら、体型がほぼ病気になる前のままだったので、ちょっとだけ安心した。
そして、しばらくして落ち着いたのか、いつもの笑顔が戻って来た。
病気なので何を食べていいのか、食べてはいけないのか分からなかったので、お見舞いに食べ物は持って来なかったが、聞けば特に食事制限はないとのこと。冷蔵庫の中には、友人、親戚が持って来てくれたマクタックやらカリブーの肉がたくさん入っていた。
そしてあまり体重を落としてしまうと病気に対抗できなくなるので、それほど痩せていないらしい。薬の影響で髪の毛が亡くなる人もいるが、彼女の場合はほぼ以前のまま。
次第に口が回り始め、自分の病気の話も、笑い飛ばしそうな勢いになって来た。やはりEはこうでなくちゃ。
傍らに常にぶら下げているバッグから胸にパイプが伸びていて、そこから体内の患部へ薬剤が常に注入されているのだそう。
座るたびに傍らに置き、立ち上がる際に肩に下げる。
「ウェストバッグのように、腰に巻けないの?」
「あ、それは考えても見なかった」
しかし太い彼女の腰はどこにあるのかよくわからない。。。
自分の携帯電話の中の写真を見せていると、日本を出る直前に撮った寿司の写真があった。
「あんた、これ、生の魚食べてるんでしょ?」
「寿司と言ったら生の魚だけど」
「すごいもん食べるのねえ」
「エスキモーって生のもの食わなかったっけ? 生の魚とか生の肉とか」
「何言っているの、私は生もの食わないわよ」
「はい?」
「凍らせて食べているの。あれは生じゃないの」
そう。エスキモーの人たちが食べている「凍らせた」肉や魚は、「生」ではないのだ。
熟成させた食べ物も「生」ではない。
「生」とは、凍らせず、熟成させていない動物から、直接切り取ったものの事と考えればよいのか。
本田勝一氏の著書にあったように、アザラシなどを解体しながら食べる場合は生なのだろう。そう言う意味ではポイントホープの人たちは、「生」のものは、一切食べない。
内緒なのだが、カリブーの袋角(成長中の角)の「生」の先端部分や「生」の肝臓は、捕れたてをその場で食うととても美味。
ただし、どんな病気が待ち受けているかは知らない(今も元気だから、たぶん大丈夫。たぶん)。
それはともかく、早く元気になってもらって、ポイントホープでEの明るく大きな笑い声を聞きたい。
ドアをノックすると、まるで子どものように泣きながら現れた彼女。
いつも気丈で元気な彼女がおいおい泣いている姿を見ていると、とても不安になってしまう。
「ねえ、泣かないでよ」
ハグしたまま泣き続けるE。再会できた事が、よほど嬉しかったのか。
Eの巨体をハグしながら、体型がほぼ病気になる前のままだったので、ちょっとだけ安心した。
そして、しばらくして落ち着いたのか、いつもの笑顔が戻って来た。
病気なので何を食べていいのか、食べてはいけないのか分からなかったので、お見舞いに食べ物は持って来なかったが、聞けば特に食事制限はないとのこと。冷蔵庫の中には、友人、親戚が持って来てくれたマクタックやらカリブーの肉がたくさん入っていた。
そしてあまり体重を落としてしまうと病気に対抗できなくなるので、それほど痩せていないらしい。薬の影響で髪の毛が亡くなる人もいるが、彼女の場合はほぼ以前のまま。
次第に口が回り始め、自分の病気の話も、笑い飛ばしそうな勢いになって来た。やはりEはこうでなくちゃ。
傍らに常にぶら下げているバッグから胸にパイプが伸びていて、そこから体内の患部へ薬剤が常に注入されているのだそう。
座るたびに傍らに置き、立ち上がる際に肩に下げる。
「ウェストバッグのように、腰に巻けないの?」
「あ、それは考えても見なかった」
しかし太い彼女の腰はどこにあるのかよくわからない。。。
自分の携帯電話の中の写真を見せていると、日本を出る直前に撮った寿司の写真があった。
「あんた、これ、生の魚食べてるんでしょ?」
「寿司と言ったら生の魚だけど」
「すごいもん食べるのねえ」
「エスキモーって生のもの食わなかったっけ? 生の魚とか生の肉とか」
「何言っているの、私は生もの食わないわよ」
「はい?」
「凍らせて食べているの。あれは生じゃないの」
そう。エスキモーの人たちが食べている「凍らせた」肉や魚は、「生」ではないのだ。
熟成させた食べ物も「生」ではない。
「生」とは、凍らせず、熟成させていない動物から、直接切り取ったものの事と考えればよいのか。
本田勝一氏の著書にあったように、アザラシなどを解体しながら食べる場合は生なのだろう。そう言う意味ではポイントホープの人たちは、「生」のものは、一切食べない。
内緒なのだが、カリブーの袋角(成長中の角)の「生」の先端部分や「生」の肝臓は、捕れたてをその場で食うととても美味。
ただし、どんな病気が待ち受けているかは知らない(今も元気だから、たぶん大丈夫。たぶん)。
それはともかく、早く元気になってもらって、ポイントホープでEの明るく大きな笑い声を聞きたい。
2014/04/01
新聞再び
みなさま。
4月1日付アラスカの地元ローカル誌に私の記事が掲載されました。
大変有り難いことです。
新聞社から許可をもらったので、紙面を載せておきますね。ご覧ください。
昨年から、メディアへの露出が増えて、嬉しいやら恥ずかしいやらです。
はい、以上、エイプリルフールでございました。
元ネタはこちらです。
4月1日付アラスカの地元ローカル誌に私の記事が掲載されました。
大変有り難いことです。
新聞社から許可をもらったので、紙面を載せておきますね。ご覧ください。
昨年から、メディアへの露出が増えて、嬉しいやら恥ずかしいやらです。
はい、以上、エイプリルフールでございました。
元ネタはこちらです。
2014/03/30
ラジオに出ます
先日、知り合いの編集者の方のお誘いで「京橋漁業協同組合ラヂオ」と言う番組の収録に行って参りました。
ポイントホープのクジラの猟について、聞かれるままに喋ったような気がしますが、よく覚えていません。
かなり緊張していたようで、収録時は何ともなかった胃袋が、終わってしばらくしてからじわじわと痛くなって来るという状態でした。しばらくすると落ち着いて来たので、居酒屋で、長々とバカ話をしておりましたが。
以前、日本テレビでアナウンサーをやっていた薮本雅子さんと、千葉の海苔漁師、金萬さん(関係筋では有名)が司会をしている、魚や海に関わる番組です。
東京都中央区のコミュニティFMなのですが、ネットで聞けます。
RADIKOでは聞けませんが、iPhoneだと「TuneIn Radio」などのアプリで聞くことが可能。
放送は4/5(土)19:30〜20:00です。
時間あったら聞いてください(再放送は4/7(月)15時30分~)。
https://www.facebook.com/Kyobashi.fc.radio
http://www.simulradio.jp/asx/chuo_fm.asx
バブリーな時代を知っている人だと、薮本さんのことを知っている人も多いかと思います。彼女の居酒屋でのぶっ壊れぶりと言ったら。。。 いや、ここには書けません。
ポイントホープのクジラの猟について、聞かれるままに喋ったような気がしますが、よく覚えていません。
かなり緊張していたようで、収録時は何ともなかった胃袋が、終わってしばらくしてからじわじわと痛くなって来るという状態でした。しばらくすると落ち着いて来たので、居酒屋で、長々とバカ話をしておりましたが。
以前、日本テレビでアナウンサーをやっていた薮本雅子さんと、千葉の海苔漁師、金萬さん(関係筋では有名)が司会をしている、魚や海に関わる番組です。
東京都中央区のコミュニティFMなのですが、ネットで聞けます。
RADIKOでは聞けませんが、iPhoneだと「TuneIn Radio」などのアプリで聞くことが可能。
放送は4/5(土)19:30〜20:00です。
時間あったら聞いてください(再放送は4/7(月)15時30分~)。
https://www.facebook.com/Kyobashi.fc.radio
http://www.simulradio.jp/asx/chuo_fm.asx
バブリーな時代を知っている人だと、薮本さんのことを知っている人も多いかと思います。彼女の居酒屋でのぶっ壊れぶりと言ったら。。。 いや、ここには書けません。
2014/03/17
飲み物の秘密
「新しい冷蔵庫を買ったよ」
「へぇ、どんなやつ?」
「製氷機がついていて、冷たい水も出てくるやつ」
「おお、いいじゃん、で何を入れる? やっぱりコカコーラ?」
先日、新しい冷蔵庫を買ったと電話がかかってきた。買ったのは冷蔵庫だけではなく、台所用のストーブ(ガス台、オーブンがセットになったもの)他、高額な品々各種。臨時収入があった模様。
そんな会話の中で出てきたコカコーラ。
実はHの家の主要飲料は缶入りのコカコーラである。
そのほかの飲み物は、果汁が入っているのかいないのかわからないジュースとエバミルク(濃縮牛乳、砂糖の入っていない練乳)。
エバミルクは7歳の長男が3倍に薄めてもらったものを哺乳瓶に入れて飲んでいる( これについのコメントは特にない)。
家主のHと奥方のEは、毎日水代わりにコカコーラを飲んでいる。
午前中、職場で1本。昼食時に1本。午後、職場で1本。帰宅して1本。夕食時に1本、テレビを見ながら1本、寝る前に1本。
これだけで7本。毎回1本丸々空けるわけではなく、半分ほど飲んで、そのまま忘れてしまい、温まったコーラはいらないと、捨ててしまうものも多いので、都合1日5本分程度飲んでいることになる。
冷蔵庫には、常に36本入りのコーラの箱が2箱入っている。台所の戸棚には4箱ほど保存してあるが、こんな調子で飲んでいるし、人が訪ねてくれば、コーラを勧め、仲の良い人たちは勝手に冷蔵庫からコーラを出して飲んでいるので、コーラは見る見る減って行く。
コーラなどの炭酸飲料は、町にある店で買うと、1本1ドル以上するので、代金引換の通信販売で買っている(1本1ドル以下)。
郵便物は郵便局まで引き取りに行かなくてはならないので、何箱ものコーラを注文しておいて、台所のコーラが無くなったら、現金や小切手を持って、受け取りに行く。郵便局を物置代わりにしているのだ。
「金持ってる? コーラが無くなっちゃったから郵便局から出してきてもらえないかな? 次の給料日には返すから」
彼らの給料日は2週間に一度。各種ローンを支払い、日々の食料であるやたらと高い鶏肉や冷凍食品を町の店で買うと、あっと言う間に給料はなくなる(らしい)ので、給料日にコーラ代を払って貰ったことはない。
しかし居候の身分で、自分も1日1本くらいはコーラを飲んでいるので、あまり文句は言えない。
「ねえ、喉が乾いちゃったからコーラ持って来て。さっき買ったの不味くて飲めないのよ」
「へぇ、どんなやつ?」
「製氷機がついていて、冷たい水も出てくるやつ」
「おお、いいじゃん、で何を入れる? やっぱりコカコーラ?」
先日、新しい冷蔵庫を買ったと電話がかかってきた。買ったのは冷蔵庫だけではなく、台所用のストーブ(ガス台、オーブンがセットになったもの)他、高額な品々各種。臨時収入があった模様。
そんな会話の中で出てきたコカコーラ。
実はHの家の主要飲料は缶入りのコカコーラである。
そのほかの飲み物は、果汁が入っているのかいないのかわからないジュースとエバミルク(濃縮牛乳、砂糖の入っていない練乳)。
エバミルクは7歳の長男が3倍に薄めてもらったものを哺乳瓶に入れて飲んでいる( これについのコメントは特にない)。
家主のHと奥方のEは、毎日水代わりにコカコーラを飲んでいる。
午前中、職場で1本。昼食時に1本。午後、職場で1本。帰宅して1本。夕食時に1本、テレビを見ながら1本、寝る前に1本。
これだけで7本。毎回1本丸々空けるわけではなく、半分ほど飲んで、そのまま忘れてしまい、温まったコーラはいらないと、捨ててしまうものも多いので、都合1日5本分程度飲んでいることになる。
冷蔵庫には、常に36本入りのコーラの箱が2箱入っている。台所の戸棚には4箱ほど保存してあるが、こんな調子で飲んでいるし、人が訪ねてくれば、コーラを勧め、仲の良い人たちは勝手に冷蔵庫からコーラを出して飲んでいるので、コーラは見る見る減って行く。
コーラなどの炭酸飲料は、町にある店で買うと、1本1ドル以上するので、代金引換の通信販売で買っている(1本1ドル以下)。
郵便物は郵便局まで引き取りに行かなくてはならないので、何箱ものコーラを注文しておいて、台所のコーラが無くなったら、現金や小切手を持って、受け取りに行く。郵便局を物置代わりにしているのだ。
「金持ってる? コーラが無くなっちゃったから郵便局から出してきてもらえないかな? 次の給料日には返すから」
彼らの給料日は2週間に一度。各種ローンを支払い、日々の食料であるやたらと高い鶏肉や冷凍食品を町の店で買うと、あっと言う間に給料はなくなる(らしい)ので、給料日にコーラ代を払って貰ったことはない。
しかし居候の身分で、自分も1日1本くらいはコーラを飲んでいるので、あまり文句は言えない。
「ねえ、喉が乾いちゃったからコーラ持って来て。さっき買ったの不味くて飲めないのよ」
夕方4時過ぎ、家で洗濯物を畳んでいると、Eから電話がかかってきた。
仕事は5時までなんだから、ちょっと我慢すりゃいいのに、と思いつつ、彼女の職場までコーラを持って行く。
「もう、大変よ。飲み物無いから喉に詰まるかと思ったわよ」
ポテトチップスの大袋を指差しながら、Eが言う。
そんな物、食ってるから、のども乾くわけだ。
「これさ、すっごく不味いのよ。買うんじゃなかった」
と、傍らにあった一口だけ飲んだと「バニラ・コーク」のボトルを指差す。
甘いコーラにバニラの香りをつけた、さらに甘ったるく感じるバニラ・コーク。
「そんなもの飲まないで水でも飲んでれば?」
「水なんか飲まないわよ。あんた飲んでなさいよ」
ええ、水、飲んでますとも。
「コーラばっかり飲んでないで、コーヒーでも飲めば?」
「あんなまずいもの、誰が飲むもんですか」
Eはコーラやジュースなど甘い物しか飲まない。 その結果なのか何なのか、巨体を持て余し、30代にして総入れ歯。
仕事は5時までなんだから、ちょっと我慢すりゃいいのに、と思いつつ、彼女の職場までコーラを持って行く。
「もう、大変よ。飲み物無いから喉に詰まるかと思ったわよ」
ポテトチップスの大袋を指差しながら、Eが言う。
そんな物、食ってるから、のども乾くわけだ。
「これさ、すっごく不味いのよ。買うんじゃなかった」
と、傍らにあった一口だけ飲んだと「バニラ・コーク」のボトルを指差す。
甘いコーラにバニラの香りをつけた、さらに甘ったるく感じるバニラ・コーク。
「そんなもの飲まないで水でも飲んでれば?」
「水なんか飲まないわよ。あんた飲んでなさいよ」
ええ、水、飲んでますとも。
「コーラばっかり飲んでないで、コーヒーでも飲めば?」
「あんなまずいもの、誰が飲むもんですか」
Eはコーラやジュースなど甘い物しか飲まない。 その結果なのか何なのか、巨体を持て余し、30代にして総入れ歯。
余談だが、Eが外出する際、入れ歯を口に入れながら、出かけていく姿は、スーパーヘビー級のボクサーが、マウスピースをはめながらリングの中央へと向かっていく姿を思い浮かべてしまう。
ただし、ボクサーは引締まった筋肉質だが、彼女はぼよんぼよん脂質。
Eはかつて、大きな病気をして、しばらくシアトルの大病院に入院していたことがある。生死に係るような病気で、長期入院しながら薬物治療を受けていた。
しばらくして無事に退院したと聞き、一安心したとともに、重い病気の薬物治療、快復したとはいえ容姿がどれだけ変わってしまったのか、とても心配だった。
翌年春、いつものようにポイントホープを訪れると、彼女の姿は、薬物治療のために髪の毛が短くなっていたものの 、それ以外はなんら変化はなかった。
「げっそりと痩せてしまったかと思ったのに、ぜんぜん変わってないじゃない」
「だって、病院の食事が美味しくないんだもの」
病院の食事がおいしくなくて、痩せていないってどういうことだ??
「Hが毎日ハンバーガー買ってきてくれたの。もちろんコーラも一緒に」
「病室でそんなもの食ってよかったの?」
「内緒なんだけどね」
他の病気にならないことを望む。。。
ある日のHとの会話。
「お前さあ、あんまりコーラばっかり飲んでると病気になってしまうよ」
「大丈夫だよ、父ちゃんだって病気になってないし」
そんなHも数ヶ月だけコーラを止めたことがある。理由はただ、「やってみたかった」から。そのときは、コーラの代わりにペットボトルに入った水を飲み続けていたそうだ。その結果、体重は10キロ以上落ちたという。
ただ、その間も、EはHの横でコーラを飲み続けていたので、結局は誘惑に負けて、元のコーラ生活に戻ってしまったが。
その「病気になっていなかったHの父ちゃん」は、毎日大量のコーラを飲み続けていたが、50代になってから、体重の増加、高血圧などを理由にコーラを含む炭酸飲料を飲むのをぴたりと止め、普段はブラックコーヒーや水を飲んでいる。
クジラの猟に出る際も炭酸飲料は欠かさない。凍らないようにクーラーバッグに入れて置いてあり、誰でも好きなときに好きなように飲めるようになっている。
各自こだわりがあり、コカコーラしか飲まない、ペプシしか飲まない人がいるので、コカコーラ、ペプシ、ルートビアなど、数種類の炭酸飲料が大量に入っている。
一仕事して大汗をかいたあとに飲む炭酸飲料はとても美味い。
氷点下10度近いときでも、きちんとした服を着ていれば、冷たい炭酸飲料も抵抗無く飲める。それどころか、大量の糖分が身体を温めてくれるような気がしないでもない。
炭酸飲料のクーラーバッグの横には、キャンディーバー(スニッカーズなどのチョコレート類)など軽食の入ったバッグが置いてある。
そのキャンディーバーを食べながら、コーラを飲んでいると「自分は一体どれだけ大量の糖分をとっているんだ?」という疑問と罪悪感のような気分が湧き出して来る。そんなときは、軽食のバッグに入っている魔法瓶のブラックコーヒーを飲んで、気分を紛らわせている。
かつて、エスキモーは不飽和脂肪酸の豊富なアザラシの脂を摂るので心臓病のリスクが低い、と言われていた。
今ではアザラシの脂肪を摂る量は減ってきており、若者の中には、アザラシ類を一切食べないものもいる。
食生活がアメリカ化してきた結果、Hの父ちゃんのように血圧を下げる薬が必要な人は多い。糖分の取りすぎで糖尿病予備軍も多いことだろう。
エスキモーに限らず、アメリカの先住民の間では、糖尿病などの成人病が深刻な問題となっている。
1日に3本炭酸飲料を飲めば、砂糖を100グラム以上摂取することになる。その他に甘いチョコや高カロリーの食事を食べ、先祖伝来の食事は減り、さらに野菜はあまり食べない。
身体も悪くなろう。
Hの家族、せめて1日に飲むコーラの量を半分にして欲しいと思うのだ。せっかく水が出てくる冷蔵庫を買ったのだから、水を飲んで欲しい。
「1年間にコーラにいくら使ってる?」
「うーん、わからない。計算したことない」
「コーラを飲むのをやめると、ものすごく大金持ちになれると思うよ」
「ああ、たぶんね」
「ホンダだって1~2台買えるんじゃないの?」
「かもしれないねえ」
ただし、ボクサーは引締まった筋肉質だが、彼女はぼよんぼよん脂質。
Eはかつて、大きな病気をして、しばらくシアトルの大病院に入院していたことがある。生死に係るような病気で、長期入院しながら薬物治療を受けていた。
しばらくして無事に退院したと聞き、一安心したとともに、重い病気の薬物治療、快復したとはいえ容姿がどれだけ変わってしまったのか、とても心配だった。
翌年春、いつものようにポイントホープを訪れると、彼女の姿は、薬物治療のために髪の毛が短くなっていたものの 、それ以外はなんら変化はなかった。
「げっそりと痩せてしまったかと思ったのに、ぜんぜん変わってないじゃない」
「だって、病院の食事が美味しくないんだもの」
病院の食事がおいしくなくて、痩せていないってどういうことだ??
「Hが毎日ハンバーガー買ってきてくれたの。もちろんコーラも一緒に」
「病室でそんなもの食ってよかったの?」
「内緒なんだけどね」
他の病気にならないことを望む。。。
ある日のHとの会話。
「お前さあ、あんまりコーラばっかり飲んでると病気になってしまうよ」
「大丈夫だよ、父ちゃんだって病気になってないし」
そんなHも数ヶ月だけコーラを止めたことがある。理由はただ、「やってみたかった」から。そのときは、コーラの代わりにペットボトルに入った水を飲み続けていたそうだ。その結果、体重は10キロ以上落ちたという。
ただ、その間も、EはHの横でコーラを飲み続けていたので、結局は誘惑に負けて、元のコーラ生活に戻ってしまったが。
その「病気になっていなかったHの父ちゃん」は、毎日大量のコーラを飲み続けていたが、50代になってから、体重の増加、高血圧などを理由にコーラを含む炭酸飲料を飲むのをぴたりと止め、普段はブラックコーヒーや水を飲んでいる。
クジラの猟に出る際も炭酸飲料は欠かさない。凍らないようにクーラーバッグに入れて置いてあり、誰でも好きなときに好きなように飲めるようになっている。
各自こだわりがあり、コカコーラしか飲まない、ペプシしか飲まない人がいるので、コカコーラ、ペプシ、ルートビアなど、数種類の炭酸飲料が大量に入っている。
一仕事して大汗をかいたあとに飲む炭酸飲料はとても美味い。
氷点下10度近いときでも、きちんとした服を着ていれば、冷たい炭酸飲料も抵抗無く飲める。それどころか、大量の糖分が身体を温めてくれるような気がしないでもない。
炭酸飲料のクーラーバッグの横には、キャンディーバー(スニッカーズなどのチョコレート類)など軽食の入ったバッグが置いてある。
そのキャンディーバーを食べながら、コーラを飲んでいると「自分は一体どれだけ大量の糖分をとっているんだ?」という疑問と罪悪感のような気分が湧き出して来る。そんなときは、軽食のバッグに入っている魔法瓶のブラックコーヒーを飲んで、気分を紛らわせている。
かつて、エスキモーは不飽和脂肪酸の豊富なアザラシの脂を摂るので心臓病のリスクが低い、と言われていた。
今ではアザラシの脂肪を摂る量は減ってきており、若者の中には、アザラシ類を一切食べないものもいる。
食生活がアメリカ化してきた結果、Hの父ちゃんのように血圧を下げる薬が必要な人は多い。糖分の取りすぎで糖尿病予備軍も多いことだろう。
エスキモーに限らず、アメリカの先住民の間では、糖尿病などの成人病が深刻な問題となっている。
1日に3本炭酸飲料を飲めば、砂糖を100グラム以上摂取することになる。その他に甘いチョコや高カロリーの食事を食べ、先祖伝来の食事は減り、さらに野菜はあまり食べない。
身体も悪くなろう。
Hの家族、せめて1日に飲むコーラの量を半分にして欲しいと思うのだ。せっかく水が出てくる冷蔵庫を買ったのだから、水を飲んで欲しい。
「1年間にコーラにいくら使ってる?」
「うーん、わからない。計算したことない」
「コーラを飲むのをやめると、ものすごく大金持ちになれると思うよ」
「ああ、たぶんね」
「ホンダだって1~2台買えるんじゃないの?」
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