2013/08/14

わたくしと「ば」

朝、目が覚めたらまず1本。ま、1本で終わることはなくて、平均すると3本くらいかな。
そうすると朝ごはんを抜いても苦にならないし、なかなかいいよ。

外から帰ってきたら、一休みしながら、とりあえず1本はいきたいね。
寝る前にも欠かさないよ。だって安心して寝られるからね。

猟から帰って来て、すぐの1本も最高だね。特に獲物が捕れたときなんて、言葉にならないよ。

1本やりながら、ソファに横になって見るテレビもいいよね。
え? 何を見るかって? ナショナルジオグラフィックチャンネルのドキュメンタリーは面白くて好きだよ。
でも、あの動物どうしが、様々な知恵と技を使って激闘するあの番組が一番すきだな。
え? 知らないの? 昔からやっているネコとネズミが激闘するあの番組を?
まぁ、いい。

ところで一本やる際、毛布が欠かせないことは君も知っているよね。あの毛布もなんでもいいわけではないんだよ。
何年も使い続けているお気に入りの一枚。時々洗濯されてしまって、お気に入りの香りが飛んでしまうことが難点と言えば難点かな。ま、すぐにもとにもどるけどね。
===========================

以上、現在6歳のとある少年の証言を勝手にまとめて見た。
普通だと2歳くらいまでにはやめるであろう「哺乳瓶」を未だに愛用している彼。
それなりに恥ずかしいと感じているようで、一応友だちには内緒。
彼の家の冷蔵庫には、彼が3歳くらいのときの哺乳瓶をくわえている写真が張ってある。
友だちがその写真を見ている。
「昔、哺乳瓶を使ってた頃の写真だね」
と、彼は何事も無いように言ってのけた。
横で聞いていた我々は爆笑していたのは言うまでもない。

彼は起きるとパンツ一丁で自分のところまでやってくる。そして
「Shingo make me Bo!」
「Bo」は「bottle(哺乳瓶)」のこと。日本語風の発音だと「ば」。
エバミルクという濃縮ミルクを3倍ほどに薄めて作ってあげる。
「自分で作れよ」
と言うけれど、未だ誰かに作らせている。
そしてお気に入りの毛布で哺乳瓶を包み隠すようにして、トムとジェリーや、アラスカ関係の番組を見ながら、チュウチュウ吸っている。

ところで、ポイントホープに限らず、エスキモーの人たちの多くは、養子のやり取りは珍しいことではなく、子どもを育てたいと思ったら、何の躊躇もなく養子をもらう。
その結果、両親と全く顔つきが違う子どもたちがたくさんいる。結構年をとったカップルの間に、幼い子どもがいたりする。
そしてほとんどの子どもたちは、自分に産みの親がいることを知っている。
産みの親と育ての親が違うことによるイジメやドロドロしたドラマは全くない。

本編の主人公の場合も、育ての母親の兄夫婦から、生まれてすぐに養子としてもらわれて来た子どもである。
そのため、母乳を知らないが、彼の哺乳瓶好きと何か関係があるのかはわからない。

さて、その彼、ついでに言うと、未だ尻を自分で拭けない。
台所で調理していようが、ベッドでくつろいでいようが、バスルームから声がかかる。
「Shingo done!(シンゴ、終わった!)」
バスルームへ行くと、四つん這いで尻をこちらへ向けて待っている。
ぶつぶつ文句を言いながら、尻を拭いてやる。
「写真撮ってやろうか? で、ベッキーに見せてあげよう」
「やだ。絶対ダメ」

来年は、哺乳瓶作りも尻拭きも終了していることを望みたい。

2013/07/12

ウミァック

エスキモーの間で古くから使われている船にはカヤックとウミァック(ウミアック)というものがある。

※ウミアックを「ウミァック」と書いているのは、ポイントホープでは、「ウミァック」に近い発音をするから。日本人の耳には「ウマーック」 とも聞こえる。


カヤックは1人ないしは2〜3人乗りの小型の細長い舟。
ウミァックは8人程度からそれ以上が乗れる大型の舟。
どちらも木製の骨組みに海獣の皮を張って作られていたが、今では布やグラスファイバーを張る場合も多い。

カヤックは今や世界中でレクレーションに用いられるほど普及しているが、エスキモーの間では廃れつつある文化と考えても良いかもしれない(グリーンランドでは今も現役だが)。
ポイントホープでは、カヤックはそれほど重要視されていなかったようで、10数年前に当時60代だった人に話を聞いたところ、その人が子供の頃、既にぼろぼろになったフレームを見たことがある、というのを聞いたくらい。
この町ではカヤックよりも、公園のボート程度の大きさの小型のウミァックを作り、使用していた。ただし、これも廃れつつあり、今やフレームが残るのみで、使っている人はほとんどいない。

ウミァックは今も現役。かつては春から秋にかけて、水面がある期間はずっと使用していたが、今ではクジラの猟の時のみ使用している。
船尾より。フレームと皮の張り方等がわかる

かつて流木のみを組み合わせて作っていたウミァックも、今では市販の製材された木材のみを使う場合が多い。しかし船首部と船尾部の立ち上がり部分のみ、流木の中から適当な形のもの(根から幹にかけての曲がった部分を使う)を使用している人も多い。
 骨組みは金具やねじ、紐を併用して組み立てられているが、もちろん金属が普及する以前は、木に穿った臍(ほぞ)と、海獣の腱や皮で作った紐で固定されていた。

船体にはウグルック(アゴヒゲアザラシ)の皮を張る(セントローレンス島など、セイウチ
の皮を用いるところもある)。
6月に捕ったウグルックの皮は、丁寧に剥いで脂肪層も取り除いておく。ポイントホープではこのとき、前後の脚は切り取らず、皮に付けたままにしておく。
ビニール袋など、密閉できる袋に入れた皮を屋外の小屋や砂の中に8月頃まで埋めておくと、皮の表面が変質して毛が抜けやすくなる。
海で洗うなどして、毛をすべて除去した皮は、そのまま乾かして2月下旬から3月上旬にかけて、ウミァックに張るまで保存しておく。

ちなみに残った前後の脚は、非常に臭いが一部のお年寄りが好んで食べるそうだ。

ウミアックの上で昼寝中
皮を張る際に使うロープもウグルックの皮を使う(ナイロンロープを使っている人も多い)。
ロープを作る際にはポイントホープで「アレギラック」と呼ぶ、未成熟の小型のウグルックの皮を用いる。この方が皮が薄くてロープに適しているとのこと。
ロープを作るためのアレギラックの解体方法は、胴体の中央付近から、服とパンツを脱がせるように皮を剥ぎ、その切り口の部分から、螺旋状にロープを切り出して行く。

干して保存しておいたウグルックの皮は、しばらく水に浸けて戻して柔らかくした後、7枚ほどの皮を数名の女性たちが1日で縫い合わせる。かつてはカリブーやベルーガの腱(シーニュー)を使ったが、今では麻や皮革用の糸を用いる。
縫い目が表面に出ないような特殊な縫い方をするため、縫い目から水が漏れることはない。

縫い合わせた皮は、フレームの滑りを良くするためにクジラの脂を塗り、フレームに張って行く。
張り上がったウミアックをしばらく天日にさらしておくことで、漂白され、白い船体となる。
濡れた状態で置いておくと、あっという間に船体は薄汚れてしまう。

クジラ祭りにて。右側2艘は皮を剥がれてしまっている。
左から2艘目はベニア板にグラスファイバー張り
6月中旬、クジラが捕れたことを祝うクジラ祭り「カグロック」が3日間に渡って執り行われる。
祭りはウミアックを中心に行われ、夜間はウミアックを運ぶソリのを横にした状態で立て、祭壇のようにしてウミアックを置いておく(詳細はいずれ「カグロック」について書くのでその際に)。

クジラを始めて捕ったキャプテンのウミァックは、クジラ祭りの2日目(あるいは最終日)に、皮をお年寄りの女性たちに切って分け与えてしまう。
この皮は、固くて丈夫なので、マクラック(ブーツ)の底に使ったり、ナイフの鞘を作ったり、色々と使い道がある。

カグロックが終わると、クジラの猟も終了。
イキガック上のウミアック
船首は北。太陽も北
ウミァックの皮を外し、折り畳んだ皮は、物置へ。状態が良ければ翌年また使用するし、場合によっては、ナルカタック(ブランケットトス、人力トランポリン)用に使われる。
骨組みだけになったウミァックは「イキガック」という木で作った棚へ載せておく。
そのとき、船首は必ず北へ向けておく。何故か分からないそうだが、昔からそうやっているとのこと。

猟になかなか出られず、あまりにヒマだったので、海岸で拾って来た木片と物置に転がっていた材木の切れ端を使って、ウミァックの模型を作ってみた。
ヒマに任せて模型を作ってみた
本当はすべての材料を海岸で拾って来たかったのだが、次第に面倒くさくなり、物置の材木で代用。
電動工具を引っ張り出すのが面倒くさくて、斧とナイフで木を縦に割って細い材をつくり、本当はすべて糸で縛って組みたかったが、面倒くさくなり接着剤を多用。
ヒマと面倒臭さの賜物である。
肋材の本数が少なかったりするが、基本的には実物と一緒。

天候が悪くヒマな日々が続いたので、皮を張ってみた。
材料は先日作ったウグルック(アゴヒゲアザラシ)のイガローック(腸)の皮。
家主からはイナローック(脱毛して漂白したアザラシの皮)を使った方が本物に近い、と
イキガック(舟を載せる棚)も
本物風に作り、上に載せてみた
言われたものの、皮自体が厚いので、外から船体構造が分かりにくくなりそう。フレームがその厚い皮の張力に耐えられなさそうでもある。
イガローックを張った方が、何となく古めかしい感じがしてよさそうだ、とのことでチクチクとイガローックを縫った。
乾いたまま縫うと針穴から裂けて来るので、水で濡らしてから縫う。
それなりの縫い方があるはずなのだが、よくわからないので適当。結果、所々隙間が見える。

クジラに撃ち込むための銛のロープには「アヴァタクパック」と呼ばれるブイ(浮き)がついている。昔は、アザラシの皮を服を脱がすように剥いで、風船のように空気を入れて膨らませたものを使っていた。
いろいろ考えた結果、この模型のウミァックに合う大きさのアヴァタクパックを作るのに、ちょうど良い大きさの生き物に思い当たった。

「アヴァタクパック作ろうと思うんだけど」
「アザラシの皮の切れ端でも使う?」
「いや、ネズミ」
「え?」
「ちょうどいい大きさじゃん」
「いい考えだと思うけど、誰が捕まえるんだ? オレはイヤだよ」

家主はネズミが恐いと言っていた。見るのも怖いらしい。ウグルックなどは平気で捕るのに。
アヴァタクパックなどを作り出したら、パドルやら銛やら色々作らなくてはならないので、とりあえず却下。

2013/07/10

野生の肉

エスキモーは生肉ばかり食べていると思っている人がいるかもしれないが、ポイントホープの場合、生肉はほとんど食べない(昔は食べたのかもしれないが)。
それなりに加工したもの、すなわち凍らせたもの、乾燥させたもの、あるいは熟成させたものを食べることが多い。

地域によって食べる動物の種類がことなり、あちらの町では普通の食べ物も、こちらの町では食べることの無い物だったり、アラスカの中でも地域差は大きい。

例えば...
セントローレンス島という、ベーリング海に浮かぶ島へ行った人。
「コーク(凍った肉)を出されたんで食べたんだよ。あとからセイウチの肉だって聞いて、気持ち悪くなっちゃって...」
ポイントホープでは、セイウチの肉は必ず茹でて食べるので、こういうことになる。

アンカレジで、ポイントホープ以外のどこか遠くの町から来たエスキモーの人たちの食事に招かれ、ポイントホープでは食べることの無い種類のアザラシの料理を出された人。
「そのアザラシ食べたの? どんな味だった?」
「そんなわけのわからないもの、食べるわけないじゃない」
違う種類のアザラシは「わけのわからないもの」になってしまう。
日本人から見れば、アザラシなんてどれも一緒だろう、と思うのだが、かなり違うものらしい。
ちなみにアゴヒゲアザラシとゴマフアザラシでは、味も肉質も全く違うので、やはり種類によって味は違うのだろう。

ポイントホープの人たちが、内陸の町の親戚の家に出かけた。
ある日、親戚一家は出かけてしまい誰もいない。腹が減って来たものの、冷蔵庫に肉があるのみ。
「この肉、なんだろう? アザラシのようだね」
「じゃスープにでもしようか」
ということでスープを作って食べていると、親戚一家が 帰って来る。
一緒にスープを食べる。
「ポイントホープでも、この肉を食べるんかね?」
「もちろん。海で捕って来て食べてるよ。おいしいよね、この肉」
「ほう、ポイントホープじゃ、これ、海にいるんだ」
「え? アザラシじゃないの?」
「これ、ビーバーだよ」
「・・・」
そう、内陸なので、アザラシはいない。
散々食べたあと、ビーバーと知らされて、しばし呆然としていたらしい。

ポイントホープの人たち、食べ慣れないもの、変わった物はあまり食べたがらない割に、日本から持って来た、スルメや煮干しは大好物だったりするので、食べる食べないの基準がどこにあるのか、未だ謎である。





2013/06/29

カッパのもと

ウグルック(アゴヒゲアザラシ)を解体すると、でろでろと長い腸、イガロックが出て来る。
その腸を切ると、うねうねと平らで細長い黄色っぽい寄生虫が大量に出て来る。勝手にサナダムシのサニーと名付けているが、実際にサナダムシの仲間なのかはよくわからない。
血液中からも大量の白くて細長い寄生虫が出て来る。これはアニサキスの仲間だと、某機関の専門家に同定してもらったことがある。なのでこちらはアニサキスのアニーと呼んでいる。

さて。その腸(主に小腸部分)。
そんなに大量に食べないので、ほとんど捨ててしまう。
食べる場合、ぶつ切りにして茹でる方法が一般的。
腸の外壁を、脂肪層の上(まな板代わり)で細かく刻んだ「カーク」は、ちょっと臭い、こりこりとした歯触りの食べ物。「エスキモーのサワークラウト」と呼ぶことがある。歯触りがサワークラウトに似ていないことも無い。

そんな腸なので、好きなだけ貰って来て、好きなように加工が出来る。
解体現場では、腸を適当な長さに切って、適当な大きさの小石を一粒腸に入れて、中身(消化中の食べ物と寄生虫)を、小石とともにしごき出す。
水に浸けたまま冷所に置いておけば、すぐに作業しなくても大丈夫。万一食べたくなったら、ぶつ切りにして、よく洗ってから茹でれば良い。

空気を入れて乾燥中
手に匂いが付くとなかなか取れないので、ゴム手袋をはめ、腸の外壁を削りとるように、スプーンで剥がしていく。こうすると外側の血管なども奇麗に取れていく。
外壁が終わったら、腸を裏返す。長いと裏返すのは大変なので、適当な長さに切っておく。
外壁同様、内壁もスプーンでこそげ落とすが、外壁ほど大量の付着物は無いので、外壁ほど時間はかからない。
内壁、外壁ともに奇麗にしたら、奇麗な水でよく荒い、腸の片方の端を紐で縛る。
そして反対側からおもむろに息を吹き
込んで、糸で縛ると、細長い風船の出来上がり。
よく洗ってもやっぱり臭いので、実は空気入れを使って膨らませているのだが。

数日天日に干せば、からからに乾いた、油紙製の風船のような物が出来上がる。
一度乾かしてしまうと、結構丈夫で、手でくしゃくしゃにしても、紙のように破れることはない。
昔はこれを切り開いて、縫い合わせ、 雨具を作っていたそうだ。何しろ腸なので、防水性は高い。

太鼓の模型と汚い手袋
今はカッパを作る必要も無いので、エ
スキモー唯一の楽器である太鼓の模型を作ったり、子供がファッションショー(様々な行事のときにエスキモーの衣装のコンテストが催される)に出るための衣装を作ったり。

何度か太鼓の模型を作ったことがある。 一部を除いて、行方不明になってしまったので、また作ろう。
余ったら何か小物入れでも作るか(臭いけど)。

北風

地図を見ればわかる通り、ポイントホープは北極海に突出した岬の先端にあり、三方を海に囲まれている。
東側も海岸沿いにラグーン(潟湖)が発達しているため、かろうじて陸地とつながっているような感じである(言うまでもなく、下の地図は上が北)。


大きな地図で見る

4月から5月にかけて、まだ海の凍っているこの時期、クジラの猟は町の南側の海面(氷上)が猟場となる(北側は水深が浅いため、クジラはやって来ず、猟に適さないとのこと)。
南の海面は、北風が吹かないと開かないために、ひたすら北風を待ち続ける。

「おまえ、あの歌、歌ってるか?」
「何? 忘れちゃったよ」
「ぶろー、ぶろーぶろーぶろー、ぶろー、のーすうぃんど ぶろー」
我らがキャプテンが調子っぱずれの歌声でオリジナルの「北風を呼ぶ歌」を歌う。
もちろん北風は吹かない。

時々、どんなに強い北風が吹き続けても、海が開かないことがある。そうなると、いつまでたっても猟に出られず、待機の日々が続く。

今年(2013年)も4月上旬に一度開いた開水面は、南風で閉じてしまい、4月下旬まで開くことが無かった。
4月の最後に数日だけ開いた開水面は、3日間で5頭のクジラをポイントホープにもたらしたが、再び南風が吹き始め、またも開水面は閉じてしまった。
 その後、5月下旬まで、どんなに強い北風が吹こうとも氷は開くことはなく、次第に上がる気温とともに、どんどん薄くなっていった。

 5月下旬、ようやく氷が開いた。あまりに薄くて危険かと思われた氷上のトレイルも、水溜りだらけながらも、かろうじて使用できる状態だったため、一部のクルーが出猟した。
6月1日、クジラが捕れた。
しかし、薄い氷に重たいクジラ。そして吹き始めた強い北風。あまりに危険なため、結局クジラのすべてを回収することは出来なかった。

6月に入り、クジラ猟が一段落するとウグルック(アゴヒゲアザラシ)の猟期となる。
天気の良い日には、氷の上でアザラシが昼寝をしている姿を見ることも多くなる。
そして強い風が数日吹き続けると、岸近くに張り付いていた氷が離れ、海岸からボートを出せるようになる(ウグルック猟では北側の水面も利用する)。

「北風の日に獲物はいないんだよ」
そう言い続けて来た。去年までは。

海流の影響もあり、一度砕けた氷は、強い北風が吹こうとも、南の海岸近くに広い海面を作ることがある。
海面の様子を確認に行っていた家主が帰って来た。
「ボート出すぞ。他のボートがウグルック(アゴヒゲアザラシ)」捕ってる」
「北風だぜ?」
「でもウグルックがいるらしい」

我が家の風見(100円の鯉のぼり)
逆さまなのはご愛嬌
そして結果は豊猟。
10日ほどの短い猟期の間に数日出猟したが、ほとんど北風が吹いていた。時々北風が止み無風状態の時もあったが、基本的に北風。

「天気予報によると、明後日から南風だって」
「南風だと何も捕れなかったりしてね」

そして吹き出した南風。あまりに強くて猟には出られない。
そして獲物もいない。
ウグルックの猟期はひとまず終了したようだ。

2013/06/08

The Arctic Sounder

常日頃、良いことをしているわけでもなく、かといって特に悪いことをしているわけでもなく(と自分で思っているだけかもしれない)、ただ他の人とはちょっと違う日常を過ごしているだけなのですが、長く変わったことを続けていると、時には注目してくれる人もいるようです。

主にアラスカの北部の町の情報を扱った「The Arctic Sounder」という週刊の地方新聞があります。
先日、Facebookにクジラの写真を載せたところ(ポイントホープで捕れた今年6頭目のクジラの写真)、どこをどうたどって来たのか、その新聞社から写真を使わせて欲しいと連絡がありました。
承諾するとともに、自分は日本人で、ポイントホープに20年も通っているんだ、と伝えたところ、そいつは面白いと、記事にされてしまった次第。
それほど難しいことは書いていないので、簡単に読めると思います(相手に自分のことを伝えるのに、難しいことを英語で書けなかったので、こうなったのかと)。
 
ウェブ版の記事は以下
http://www.thearcticsounder.com/article/1323japanese_visitor_finds_second_home

期間限定ですが、新聞自体をPDFでダウンロードできます。
http://www.thearcticsounder.com/pdf/as.pdf
※このページは恐らく2013年6月12日までのはず。
 それ以降は、次の号の記事になってしまいますので、どうしても読んでみたいという方は、ご相談ください。

家族(居候先や日本の)や友達が喜んでくれたことが、何よりも嬉しかったです。

2013/06/06

鳥の解体方法(閲覧注意)

2021年5月、修正済み(太字部分)。

春から夏にかけてがガンやカモの猟期。
特に5月中旬くらいは、ハクガンをはじめとするガンの猟期である。
捕れたてをすぐに捌くこともあれば、丸のまま冷凍庫に放り込んでおいて、必要なときに解凍して捌くこともある。

鳥インフルエンザが猛威をふるっていた頃は「鳥を扱う際は、ゴム手袋をして、ものを食べたりタバコを吸いながらの解体は控えましょう」というパンフレットが配られていたが、特に誰も気にすることなく、普段通り解体していた。

「ガンを貰ったから解体しといてくれない?」
家で一番ヒマにしているのは自分なので、必ず声がかかる。
そして先日は(2021年)は、1日で47羽もハクガン(この辺りでは「カゴック」と呼ぶ)を捕ってきて、家主が仕事なもんだから、朝から晩まで解体をつづけていた。

以前は、鳥の解体と言えば、基本的には羽根をむしることから始まると思っていた。
知っている人は知っている通り、死んで冷たくなってしまった鳥から羽根をむしり取るのはかなり大変である(熱湯に浸けるなど方法はある)。大量に処理する必要のあるこの付近では、なので鳥の解体は、皮剥ぎから始まる。

今回は備忘録も兼ねて、鳥の解体方法に付いて。

用意するものは、まな板代わりの段ボール、ナイフ、水、ゴミ袋、ジップロック、ペーパータオルなど。

背中に切り込みを入れて少し開いたところ
これはネガリック(ハイイロガンの仲間)
肉のほとんどついていない羽の先の方や、脚の先はあらかじめ切り落としておくいても良い。ただし、地域によっては、脚を食べるところもあるそうなので、その地域の風習に従う。
背中側、背骨腹側に指を当てると、胸骨の硬い部分に触れるので、胸骨に沿って数センチ、指が数本1本入る程度の切れ目を皮にいれる。そこを手がかりに背中側腹側から皮を剥ぎ始める。

(追記:2021年、大量にハクガンを処理した結果、腹側からの方が楽だと判明)

羽根の付根、足の付根、首、頭と剥いで行く正中線に沿って、皮と身の間に指を突っ込んで腹側、首側へと剥いでいく。頭部から尻まで、切れ目ができたら、首、頭の皮を剥がす。(順番は適当)。頭を食べない場合は、切り落としてしまっても良いが、脳みそは意外と美味い。
腹側から、胴体の皮はある程度皮を剥がしておく。そして背中を上にして、首の皮を手掛かりに、後ろに皮を引くようにして、羽根部分へ。
羽根に残った羽毛を握り、袖を脱がすように羽根の皮を剥ぐ。
次いで、ズボンを脱がすように足の皮を剥ぐ。

片足を脱がされた状態
胸の皮を剥がすと羽にたどり着くので、羽に残った羽毛を握り、方袖ずつ脱がすがごとく、引き剥がす。

しっぽの先、いわゆる「ぼんじり」の部分は、羽毛とともに身体に残る。どうしても食べたければ丁寧に羽毛を取り除いて確保しても良いが、面倒くさいので、普通はそのまま切り捨ててしまう。

丸裸

ちょうど、背中腹にジッパーの付いた着ぐるみを脱がすような感じで皮を剥ぐ。上手に剥ぐことができれば、皮はすべて繋がったままなので、中に詰め物をすれば剥製のようになる(はず)。


鳥は皮の部分が一番美味い、と思っている人も多いと思う。自分もその一人だが、羽毛をむしる手間を考えると、皮を剥いてしまった方が手っ取り早い。
剥いだ皮には、美味しそうな脂肪層がたっぷり付いているのがとても残念なのだが、内臓脂肪も多いので、気にすることもないと思う。

 ガンカモ類を捕まえる際は散弾銃を使用する。銃で撃たれているため、ほとんどの場合、どこかの骨が折れている。鳥の骨は非常に鋭いので、皮を剥がす際、この骨でケガをしないように気をつける。
気をつけつつも時々ケガをし、そして鳥インフルエンザのことが頭をよぎるのだった。
(2021年、鳥インフルのことはすっかり忘れていた。そして手を洗うのが億劫でゴム手袋使用)

皮の剥けた鳥の首の根元にぐるりとナイフを入れ、首を切り取る(折り取る)。頭の付け根も同様に。首の肉は少ないが、出汁が出るので、真ん中あたりで切って半分にする。
首のなくなった鳥を仰向けにして、
腹側から、脚を外側へ思いきり開き、脚を胴体から離れさせる。脚の付根付近にナイフを入れて、行くと、意外とあっけなく腿肉の付いた足が外れる。ニワトリと比べると腿肉は貧弱に思えるが、ニワトリは歩く鳥、ここで解体しているのは飛ぶ鳥。
羽根の付け根付近にナイフを入れる。関節に沿って肉を切っていくと、羽根が外れる。
翼の付根付近を背中側から見る(指で触る)と肩甲骨が見える確認できる。背骨と肩甲骨の間にナイフを入れて分離させる。裏返して腹側から羽の付根付近にナイフを入れて行くと、関節が外れ、羽の骨が外れる。
脚も羽も関節に沿って切れば、力はいらない。

指が入っている部分から肋骨を分離

頭と胴体だけになった鳥の肩甲骨の真下あたりに人差し指を突っ込み(右の写真)、 指を鍵型にして尻の方向へぐいぐい引いて行くと、肋骨の関節が外れる。ちょっと力はいるが、ナイフはいらない。
左右ともに肋骨の関節をはずし、腹側を押さえて首根っこを引き上げると、腹部と内臓の付いた背部に別れるので、内臓を外すし、首を切る。

腹部には胸肉がたっぷりと付いている。まず、肩甲骨を関節で折り、肉を回収。ついで、いわゆるウィッシュボーンと呼ばれる部位の肉を胸肉と切り離す。阻止関節から折りとる。
ので、肋骨側からナイフを入れて、次いで、肋骨と肉の隙間から指を突っ込んで、剥がしていく。そして胸骨についている部分を外側から切り取ると、大きな胸肉がとれる。骨に沿って剥がしてく。
そして胸骨の根元付近に残った、いわゆる「ささみ」も、指を使って剥がす。

内臓を外した背中側は、尻骨付近に大量の脂肪がついているため、肋骨が終わるあたりに上部からナイフを入れて折り、ほとんど肉のない前半部分は破棄。

上から砂肝、心臓、腸
内臓は砂肝、心臓、腸を食べる。メスの場合、卵巣に成長途中の卵がある場合もあり、それも食べる。肝臓など他の臓器も食べられるとは思うが、試したことはない。

内臓の周りには黄色い脂肪がたっぷりとついている場合がある。人間だと内臓脂肪は毛嫌いされるが、スープに入れると美味しいので、捨てずに取っておく。
右の写真、腸とともに写っている黄色いものが脂肪。
腸は中身を出して奇麗にしておく。あまりに血まみれ、腸の中身が黒かったりした場合は、腸を破棄することもある。

砂肝の断面

ちなみに砂肝の中は、名前の通り砂だらけ。未消化の植物が入っていることも。
砂を奇麗に落とし、内壁の革質化した分を剥がす。

不思議なことに、これだけ砂がたくさん入っていても、腸には全く砂は入っていない(多少は入るのかもしれないが)。

さて、一通り解体の終わった段ボールは、血まみれでヌトヌトしている。ペーパータオルで拭いてもよいのだが、キリがないし、1羽ごとに段ボールを交換するのも、これまた大変。そこで編み出した技が、剥いだ皮で段ボールを拭く、というもの。
ハクガンの白く美しい羽毛のついた皮で、血まみれの段ボールを拭くのはちょっと気が引けたものの、そもそもこの皮、もうゴミでしかないので、使ってあげた方が、よいのかと。

 切り取った肉や内臓は、用意した水で洗い、ジップロックに入れて保存するか、そのままぶつ切りにして、鍋で煮込んでスープに。
弾丸の当たった周辺の血で真っ黒になった部分は「オガーク」と呼ばれ、まずいらしく、食べずに捨ててしまう。

味付けは塩のみ。他の具材はタマネギ程度で、とろみ付けに米やマカロニなどを入れる。
これだけで非常に味の濃いスープの出来上がり。
このスープに、醤油、ニンニク、生姜をちょっと入れると、ラーメンにも合いそうなスープが出来上がる。これに「讃岐うどん」などの乾麺を茹でたものを入れても、最高に美味しい。