2014/03/30

ラジオに出ます

先日、知り合いの編集者の方のお誘いで「京橋漁業協同組合ラヂオ」と言う番組の収録に行って参りました。
ポイントホープのクジラの猟について、聞かれるままに喋ったような気がしますが、よく覚えていません。
かなり緊張していたようで、収録時は何ともなかった胃袋が、終わってしばらくしてからじわじわと痛くなって来るという状態でした。しばらくすると落ち着いて来たので、居酒屋で、長々とバカ話をしておりましたが。
以前、日本テレビでアナウンサーをやっていた薮本雅子さんと、千葉の海苔漁師、金萬さん(関係筋では有名)が司会をしている、魚や海に関わる番組です。
東京都中央区のコミュニティFMなのですが、ネットで聞けます。
RADIKOでは聞けませんが、iPhoneだと「TuneIn Radio」などのアプリで聞くことが可能。
放送は4/5(土)19:30〜20:00です。
時間あったら聞いてください(再放送は4/7(月)15時30分~)。
https://www.facebook.com/Kyobashi.fc.radio
http://www.simulradio.jp/asx/chuo_fm.asx

バブリーな時代を知っている人だと、薮本さんのことを知っている人も多いかと思います。彼女の居酒屋でのぶっ壊れぶりと言ったら。。。 いや、ここには書けません。

2014/03/17

飲み物の秘密

「新しい冷蔵庫を買ったよ」
「へぇ、どんなやつ?」
「製氷機がついていて、冷たい水も出てくるやつ」
「おお、いいじゃん、で何を入れる? やっぱりコカコーラ?」

先日、新しい冷蔵庫を買ったと電話がかかってきた。買ったのは冷蔵庫だけではなく、台所用のストーブ(ガス台、オーブンがセットになったもの)他、高額な品々各種。臨時収入があった模様。
そんな会話の中で出てきたコカコーラ。
実はHの家の主要飲料は缶入りのコカコーラである。
そのほかの飲み物は、果汁が入っているのかいないのかわからないジュースとエバミルク(濃縮牛乳、砂糖の入っていない練乳)。

エバミルクは7歳の長男が3倍に薄めてもらったものを哺乳瓶に入れて飲んでいる( これについのコメントは特にない)。

家主のHと奥方のEは、毎日水代わりにコカコーラを飲んでいる。
午前中、職場で1本。昼食時に1本。午後、職場で1本。帰宅して1本。夕食時に1本、テレビを見ながら1本、寝る前に1本。
これだけで7本。毎回1本丸々空けるわけではなく、半分ほど飲んで、そのまま忘れてしまい、温まったコーラはいらないと、捨ててしまうものも多いので、都合1日5本分程度飲んでいることになる。

冷蔵庫には、常に36本入りのコーラの箱が2箱入っている。台所の戸棚には4箱ほど保存してあるが、こんな調子で飲んでいるし、人が訪ねてくれば、コーラを勧め、仲の良い人たちは勝手に冷蔵庫からコーラを出して飲んでいるので、コーラは見る見る減って行く。

コーラなどの炭酸飲料は、町にある店で買うと、1本1ドル以上するので、代金引換の通信販売で買っている(1本1ドル以下)。
郵便物は郵便局まで引き取りに行かなくてはならないので、何箱ものコーラを注文しておいて、台所のコーラが無くなったら、現金や小切手を持って、受け取りに行く。郵便局を物置代わりにしているのだ。

「金持ってる? コーラが無くなっちゃったから郵便局から出してきてもらえないかな? 次の給料日には返すから」
彼らの給料日は2週間に一度。各種ローンを支払い、日々の食料であるやたらと高い鶏肉や冷凍食品を町の店で買うと、あっと言う間に給料はなくなる(らしい)ので、給料日にコーラ代を払って貰ったことはない。
しかし居候の身分で、自分も1日1本くらいはコーラを飲んでいるので、あまり文句は言えない。

「ねえ、喉が乾いちゃったからコーラ持って来て。さっき買ったの不味くて飲めないのよ」
夕方4時過ぎ、家で洗濯物を畳んでいると、Eから電話がかかってきた。
仕事は5時までなんだから、ちょっと我慢すりゃいいのに、と思いつつ、彼女の職場までコーラを持って行く。
「もう、大変よ。飲み物無いから喉に詰まるかと思ったわよ」
ポテトチップスの大袋を指差しながら、Eが言う。
そんな物、食ってるから、のども乾くわけだ。
「これさ、すっごく不味いのよ。買うんじゃなかった」
と、傍らにあった一口だけ飲んだと「バニラ・コーク」のボトルを指差す。
甘いコーラにバニラの香りをつけた、さらに甘ったるく感じるバニラ・コーク。
「そんなもの飲まないで水でも飲んでれば?」
「水なんか飲まないわよ。あんた飲んでなさいよ」
ええ、水、飲んでますとも。
 「コーラばっかり飲んでないで、コーヒーでも飲めば?」
「あんなまずいもの、誰が飲むもんですか」
Eはコーラやジュースなど甘い物しか飲まない。 その結果なのか何なのか、巨体を持て余し、30代にして総入れ歯。
余談だが、Eが外出する際、入れ歯を口に入れながら、出かけていく姿は、スーパーヘビー級のボクサーが、マウスピースをはめながらリングの中央へと向かっていく姿を思い浮かべてしまう。
ただし、ボクサーは引締まった筋肉質だが、彼女はぼよんぼよん脂質。

Eはかつて、大きな病気をして、しばらくシアトルの大病院に入院していたことがある。生死に係るような病気で、長期入院しながら薬物治療を受けていた。
しばらくして無事に退院したと聞き、一安心したとともに、重い病気の薬物治療、快復したとはいえ容姿がどれだけ変わってしまったのか、とても心配だった。
翌年春、いつものようにポイントホープを訪れると、彼女の姿は、薬物治療のために髪の毛が短くなっていたものの 、それ以外はなんら変化はなかった。
「げっそりと痩せてしまったかと思ったのに、ぜんぜん変わってないじゃない」
「だって、病院の食事が美味しくないんだもの」
病院の食事がおいしくなくて、痩せていないってどういうことだ??
「Hが毎日ハンバーガー買ってきてくれたの。もちろんコーラも一緒に」
「病室でそんなもの食ってよかったの?」
「内緒なんだけどね」
他の病気にならないことを望む。。。

ある日のHとの会話。
「お前さあ、あんまりコーラばっかり飲んでると病気になってしまうよ」
「大丈夫だよ、父ちゃんだって病気になってないし」
そんなHも数ヶ月だけコーラを止めたことがある。理由はただ、「やってみたかった」から。そのときは、コーラの代わりにペットボトルに入った水を飲み続けていたそうだ。その結果、体重は10キロ以上落ちたという。
ただ、その間も、EはHの横でコーラを飲み続けていたので、結局は誘惑に負けて、元のコーラ生活に戻ってしまったが。

その「病気になっていなかったHの父ちゃん」は、毎日大量のコーラを飲み続けていたが、50代になってから、体重の増加、高血圧などを理由にコーラを含む炭酸飲料を飲むのをぴたりと止め、普段はブラックコーヒーや水を飲んでいる。

クジラの猟に出る際も炭酸飲料は欠かさない。凍らないようにクーラーバッグに入れて置いてあり、誰でも好きなときに好きなように飲めるようになっている。
各自こだわりがあり、コカコーラしか飲まない、ペプシしか飲まない人がいるので、コカコーラ、ペプシ、ルートビアなど、数種類の炭酸飲料が大量に入っている。
一仕事して大汗をかいたあとに飲む炭酸飲料はとても美味い。
氷点下10度近いときでも、きちんとした服を着ていれば、冷たい炭酸飲料も抵抗無く飲める。それどころか、大量の糖分が身体を温めてくれるような気がしないでもない。
 炭酸飲料のクーラーバッグの横には、キャンディーバー(スニッカーズなどのチョコレート類)など軽食の入ったバッグが置いてある。
そのキャンディーバーを食べながら、コーラを飲んでいると「自分は一体どれだけ大量の糖分をとっているんだ?」という疑問と罪悪感のような気分が湧き出して来る。そんなときは、軽食のバッグに入っている魔法瓶のブラックコーヒーを飲んで、気分を紛らわせている。

かつて、エスキモーは不飽和脂肪酸の豊富なアザラシの脂を摂るので心臓病のリスクが低い、と言われていた。
今ではアザラシの脂肪を摂る量は減ってきており、若者の中には、アザラシ類を一切食べないものもいる。
食生活がアメリカ化してきた結果、Hの父ちゃんのように血圧を下げる薬が必要な人は多い。糖分の取りすぎで糖尿病予備軍も多いことだろう。
 エスキモーに限らず、アメリカの先住民の間では、糖尿病などの成人病が深刻な問題となっている。
1日に3本炭酸飲料を飲めば、砂糖を100グラム以上摂取することになる。その他に甘いチョコや高カロリーの食事を食べ、先祖伝来の食事は減り、さらに野菜はあまり食べない。
身体も悪くなろう。

Hの家族、せめて1日に飲むコーラの量を半分にして欲しいと思うのだ。せっかく水が出てくる冷蔵庫を買ったのだから、水を飲んで欲しい。

「1年間にコーラにいくら使ってる?」
「うーん、わからない。計算したことない」
「コーラを飲むのをやめると、ものすごく大金持ちになれると思うよ」
「ああ、たぶんね」
「ホンダだって1~2台買えるんじゃないの?」
「かもしれないねえ」

2014/02/18

ジョー

「おう、シンゴ、今年も来たんだな」
「あ、うん。ええっと.。。。」
聞いたことのある声、見たことのある風貌、だけど誰だか思い出せない。
「何だお前、オレが誰かわからないのか? ジョー、ジョー・フランクソンだよ」
「なんだ、ジョーか、久しぶり。サングラスして帽子なんてかぶってるから誰か分からなかったよ」
5月、氷の上でクジラを引き上げる準備をしているときのこと。80歳近くなっても、今も現役のクジラ猟のキャプテンのジョー。
クジラを捕った直後のジョー
普段、サングラスもしていないし帽子もかぶっていないので、本当に誰だか分からなかった。

数日後、そのジョーのクルーがクジラを捕ったと連絡が入った。小さなクジラだったので、現場にたどり着いたときには、クジラは既に氷の上。
キャプテンのジョーにおめでとうと言ってから、解体の輪に加わる。 我々のニギャック(分け前)分を切り取り、ついでに他のクルーの分も手伝って、解体はあっという間に終了した。

その年のカグロック(クジラ祭り)2日目。
ジョーが人々の名前を呼びながら、クジラの尾びれ「アヴァラック」を配っているところ

を写真を撮りながら、うろうろしていた。
アヴァラックを切るクルーを見守るジョー
「シンゴー、シンゴいるか? シンゴ・キニヴァック」
ジョーが呼んでいる。
「キニヴァック」は自分の所属するクジラ組のキャプテンのラストネーム。一応、自分はキャプテンの息子ということになっているので、間違えではない(と思う)。
ジョーがこちらを見ながら、いたずらっぽい目で笑っている。周りの人たちも笑っている。
「ありがとう、ジョー」
アヴァラックを受け取り、ジョーとハグをする。

ジョーはこの年を最後に、キャプテンを後任に譲った。しかし翌年も積極的に猟には出続けていた。

2014年、ジョーがアンカレジの病院へ入院したと聞いた。脳溢血だったらしい。
娘のHが時々、Facebookにジョーとのやり取りを載せていたので、まだ回復の見込みはあるものと思っていた。
しかし、次第にHの書き込みは減っていった。

ある暖かい冬の日の午後、打合せ帰りに電車に乗って携帯電話でFacebookを見ていた。誰かが元気な頃のジョーの写真をアップし「R.I.P.」と記していた。
「Rest in Peace」日本語にすれば「ご冥福をお祈りいたします」

また、ポイントホープの歴史を知る一人がこの世の中からいなくなってしまった。なんと寂しいことだろう。
ジョー、まさかこんなにあっけなく行ってしまうとは思わなかったよ。

2014/01/22

クジラの切り方

ポイントホープの場合、クジラに最初に銛を打ったクジラ組のキャプテンにそのクジラの所有権があり、解体から分配まで、そのキャプテンの指示に従うことになる。
ただし、分配方法にはポイントホープに伝わる手法があるため、好き勝手に分配するわけにはいかない。

銛が脊椎にあたれば、一発でクジラが死ぬが、滅多にそういうことはないので、付近にいた他のクジラ組が続けて銛を打つことになる。
たとえば、付近にいたクジラ組3組の銛だけでクジラが絶命したとする。4組目が現場にたどり着いたとき、クジラは既にロープに縛られ海に浮いている。4組目は、ボートのパドルでクジラに触れる。そのことで4番目に銛を打ったと見なされる。以下、5番、6番目も同様である。

クジラを曳航中
クジラを曵いて氷の際まで。かつては手漕ぎのウミァックで延々とパドルを動かし続けていたが、近年はスピードボート(モーターボート)を使うことが多くなり、肉体的には楽になって来ている。
それでもクジラを氷の際まで運んで来るのに、何艘ものボートで数時間かかることも多い。

各部の名称
クジラに印を付ける
右のピンク色の部分はマクタックを切り取った場所
氷の際まで運んで来たクジラは、水中にある状態で、尾びれ「アヴァラック」を切り取る。その後、切り分ける目印にするため、ロープとナイフを使い、クジラの胴体を回転させながら印を付けていく。
銛を打った順番で、貰える部位「ニギャック(分け前)」が決まっている。
例えば3番銛は「カー(下顎の部分)」5番銛は「スィルヴィック(腹部)」など(右図参照)。
クジラが氷の際へ曵き寄せられ、ある程度印が付けられると、胴体の「ウアティ」と呼ばれる部位から表皮(マクタック)の一部が切り取られ、その場で茹でられて、作業している人たちに振る舞われる。
そして滑車とロープを使ってクジラ氷上へ引き上げ、クジラに付けられた印に従って解体を勧めていく(引き上げ、解体についてはそのうち)。

2013年6月、50フィート(15m)ほどの巨大なクジラが捕れた。我々のクジラ組は、5番目にクジラに触れたので(クジラにたどり着いたとき、既に絶命し曳航がはじまっていた)、我々のニギャックはスィルヴィックとなった。
猟期も終わりに近い6月、氷は薄く、クジラを引き上げるたびに、クジラの重みで薄い氷が割れ、解体は難航した。
マクタックを剥ぎ取り、クジラを少し軽くしてから引き上げを試みたが、相変わらず氷は割れ続ける。
次第にクジラ周辺の氷は危険な状態になり、結局一部のマクタックと肉しか回収できなかった。そして我々のニギャックは最後まで切り取ることはできなかった。
 そんな状態でも、一番銛を打ったクジラ組のキャプテンから、町の各戸、猟に参加したクジラ組のキャプテンにマクタックと肉が配布された。
キャプテンに配られたマクタックと肉は、さらにそれぞれのクルーへと分配された。

ポイントホープでクジラが捕れれば、小さいクジラであっても、何らかの理由で肉が全て回収できなくても、町中の人たちがマクタック、肉を得られるようになっている。


2014/01/01

新年のご挨拶とお知らせ

明けましておめでとうございます。

昨年後半から年末にかけて、何かとやることが多くなり、長いこと更新が滞っておりました。今年はなるべくネタを見付けて、更新するよう努力しますので、今後ともよろしくお願いいたします。

さて、2月から「海旅一座」という芸人の巡業が始まります。
「海から賜ったもの」というテーマのもと、今回の巡業では、長崎、佐世保に始まって、九州、中国地方を回ります。
私は時間の都合で、長崎、佐世保巡業にしか参加できませんが「海を喰らう」として、クジラの猟、捕ったクジラの食べ方などについて話をする予定です。
その道のプロフェッショナルによる、滅多に聞くことのできない、海旅の話を聞くことができると思います。

皆様のご参加をお待ちしております。



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■2014年 長崎~福岡~島根~山口の新春海旅芸人巡業
「海旅一座 長崎旗揚げ夜話会」
テーマ「海から賜ったもの」
話士

洲澤育範(皮舟大工) 「時を行く舟」
高沢進吾(エスキモー猟師見習い) 「海を喰らう」
鈴木克章(シーカヤック海洋冒険家) 「海気の向こう側」
石川仁(葦船海洋冒険家) 「草の船で海を舞う」

■日時 2014年2月1日(土)   開場 17:00 開演 17:30~20:00
■参加費 ¥1,500(飲み物付き) 小学生以下は無料
■場所「長崎シビックホール」 住所 長崎市常盤町1-1 メットライフアリコビル1F 電話 095-822-8161 アクセス 路面電車「市民病院駅」下車徒歩3分 駐車場 近くにコインパーキングあり
■担当・問合せ申込先  石川仁 090-9345-5372 
■講演内容
海旅のスペシャリストたちが、長崎の地より海の手紙をお渡しいたします。
○洲澤育範(皮舟大工) 

「時を行く舟」
 海から生まれた命は海へ還りたい、海を旅したい。われわれの血の奥底に眠る海洋ほ乳動物の記憶を呼び覚ます道具、それが革舟・カヤック、それが皮舟・バークカヌー。 http://elcoyote1990.com/
○高沢進吾(エスキモー猟師見習い) 

「海を喰らう」
アラスカ北極圏イヌピアック・エスキモーの町「ポイントホープ」に通い始めで20余年。クジラ猟に参加すること10数年。時代とともに変化し続ける文化と、今に続く伝統を吸収したいと今も通い続けている。

 http://homepage1.nifty.com/arctic/
○鈴木克章(シーカヤック海洋冒険家) 

「海気の向こう側」
手漕ぎ舟日本一周の海旅のお話。一人ぼっちで海を漕ぎ続けた25ヶ月間。 左足はどこまでも連続した野生へ。右足は現代日本社会へ。 軸なる私はその様な環境の中で、何を思い何を感じたのか。そして何を伝えたいのか。

 http://hirumanonagareboshi.hamazo.tv/
○石川仁(葦船海洋冒険家)
 
「草の船で海を舞う」
 人類が作り出した最初の乗り物とされる葦船(あしぶね)で海を渡る。まるでタイムマシンのように数千年前まで感覚が戻されていく海旅。そこにはむき出しの自然と戦い、そして抱き合うドラマがあった。 http://kamuna.net

2013/10/08

ネズミ

ポイントホープでは、8月も下旬を過ぎると、もうすっかり秋である。
その頃になると、川を遡るマス類の漁のために、内陸のククピァック川へ出かける人が増えてくる。
ククピァック川での漁は、秋から冬、氷が張り込めても行われている。

ククピァック川で捕れる主な魚のひとつに、グレイリング(カワヒメマス)がいる。
日本ではあまりなじみがないが、一部の管理釣り場(釣り堀)で釣ることが可能。また、一部の川や湖で「特定外来魚」として、厄介者扱いされている魚でもある。
背びれが非常に大きく、他のマス類とはすぐに区別が付く。マス類の中ではもっとも美しい魚と言われている(らしい)。
ポイントホープでは、主に凍らせたものをナイフでぶつ切りにしてから皮を剥ぎ、適当な大きさに切って、シールオイルを付けて食べる(コークと言う)。肉も美味だが、胃袋も貝のような歯ごたえがあって美味しい(他のマス類は胃袋を食べる人は少ないと思われる)。

今年もポイントホープにグレイリングの季節がやってきた。
フェイスブックに大漁のグレイリングの写真を載せているポイントホープの友人が何人もいた。
そのフェイスブックに上げられたいくつかの写真の中に、妙な写真が1枚。
ダンボールの上で腹部を開かれたグレイリングの横に、びしょ濡れの毛玉のようなものが二つ。なんだろう? と思ってコメントを読んでみると
「グレイリングの腹の中から、ネズミが2匹出て来た。こんなのは始めてだ」
と。
北海道のイトウなどは、かなり獰猛で陸上に住むネズミなどを食べると聞いたことはあるが、グレイリングがネズミを食べるとは聞いたことがない。

そんな矢先、ポイントホープの居候先の主、Hから電話がかかって来た。
「なあ、知ってるか? Jが捕ったグレイリングの腹からネズミが出て来たんだよ」
「ああ、知ってるよ。フェイスブックに写真が出てたよ」
「オレはもう、金輪際グレイリングは食わないからね」
Hは普段、魚を凍らせたも「コーク」はほとんど食べないのだが、唯一食べるのがグレイリングだった。

約2週間後、再びHからの電話。
「知ってるか? グレイリングの腹からネズミが出て来た話」
「うん、この間してくれたよね」
「父ちゃんがグレイリングくれるって言ったんだけど、オレは食わないからいらないって言ったんだよ」
「もう、そっちはかなり寒いんだろう? 川も凍ってるんじゃないの?」
「そうだね、そろそろ凍ってるかもしれないね。でも今日は暖かかったから、少し融けたかもしれないけど」
ちなみに、Hはみんなが魚をくれるので、わざわざ川まで魚を捕りに行くことはない。
「だとしたら、もう川辺にネズミはいないんじゃない? グレイリングの腹からネズミは出て来ないと思うよ」
「いや、もう食わない。絶対に食わない」

以前にも書いたが、彼はネズミが大嫌いである。怖いらしい。
ちなみに虫も嫌いであることも以前に書いた。
夏、レストランから買って来たハンバーガーの包みからハエが飛び出して来たことがあった。
「オレは二度とレストランのものは食わない」
と言っていたのに、2週間もしたら再びレストランのハンバーガーを食っていた。
なので、ほとぼりが冷めた頃には、再びグレイリングを食べているのではないかと思うのである。

2013/08/14

わたくしと「ば」

朝、目が覚めたらまず1本。ま、1本で終わることはなくて、平均すると3本くらいかな。
そうすると朝ごはんを抜いても苦にならないし、なかなかいいよ。

外から帰ってきたら、一休みしながら、とりあえず1本はいきたいね。
寝る前にも欠かさないよ。だって安心して寝られるからね。

猟から帰って来て、すぐの1本も最高だね。特に獲物が捕れたときなんて、言葉にならないよ。

1本やりながら、ソファに横になって見るテレビもいいよね。
え? 何を見るかって? ナショナルジオグラフィックチャンネルのドキュメンタリーは面白くて好きだよ。
でも、あの動物どうしが、様々な知恵と技を使って激闘するあの番組が一番すきだな。
え? 知らないの? 昔からやっているネコとネズミが激闘するあの番組を?
まぁ、いい。

ところで一本やる際、毛布が欠かせないことは君も知っているよね。あの毛布もなんでもいいわけではないんだよ。
何年も使い続けているお気に入りの一枚。時々洗濯されてしまって、お気に入りの香りが飛んでしまうことが難点と言えば難点かな。ま、すぐにもとにもどるけどね。
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以上、現在6歳のとある少年の証言を勝手にまとめて見た。
普通だと2歳くらいまでにはやめるであろう「哺乳瓶」を未だに愛用している彼。
それなりに恥ずかしいと感じているようで、一応友だちには内緒。
彼の家の冷蔵庫には、彼が3歳くらいのときの哺乳瓶をくわえている写真が張ってある。
友だちがその写真を見ている。
「昔、哺乳瓶を使ってた頃の写真だね」
と、彼は何事も無いように言ってのけた。
横で聞いていた我々は爆笑していたのは言うまでもない。

彼は起きるとパンツ一丁で自分のところまでやってくる。そして
「Shingo make me Bo!」
「Bo」は「bottle(哺乳瓶)」のこと。日本語風の発音だと「ば」。
エバミルクという濃縮ミルクを3倍ほどに薄めて作ってあげる。
「自分で作れよ」
と言うけれど、未だ誰かに作らせている。
そしてお気に入りの毛布で哺乳瓶を包み隠すようにして、トムとジェリーや、アラスカ関係の番組を見ながら、チュウチュウ吸っている。

ところで、ポイントホープに限らず、エスキモーの人たちの多くは、養子のやり取りは珍しいことではなく、子どもを育てたいと思ったら、何の躊躇もなく養子をもらう。
その結果、両親と全く顔つきが違う子どもたちがたくさんいる。結構年をとったカップルの間に、幼い子どもがいたりする。
そしてほとんどの子どもたちは、自分に産みの親がいることを知っている。
産みの親と育ての親が違うことによるイジメやドロドロしたドラマは全くない。

本編の主人公の場合も、育ての母親の兄夫婦から、生まれてすぐに養子としてもらわれて来た子どもである。
そのため、母乳を知らないが、彼の哺乳瓶好きと何か関係があるのかはわからない。

さて、その彼、ついでに言うと、未だ尻を自分で拭けない。
台所で調理していようが、ベッドでくつろいでいようが、バスルームから声がかかる。
「Shingo done!(シンゴ、終わった!)」
バスルームへ行くと、四つん這いで尻をこちらへ向けて待っている。
ぶつぶつ文句を言いながら、尻を拭いてやる。
「写真撮ってやろうか? で、ベッキーに見せてあげよう」
「やだ。絶対ダメ」

来年は、哺乳瓶作りも尻拭きも終了していることを望みたい。