茹でたウグルックの肉をナイフで切り、そのままだとパサパサして味気ないので、茹でた皮下脂肪をちょっと添えて。
時々付け合せの生のタマネギとザワークラウトも食べれば、口の中がさっぱりして、また、大きな肉のかたまりに手が伸びる。
その横で、コカコーラを飲みながら、レストランで買ってきたハンバーガーを食べているH。
「エスキモーが何食ってるんだよ、どっちがエスキモーかわからないよな」
今食べているウグルックは、そのHがボートの上から撃ったもの。
「うーん、ウグルックはちょっと脂っこ過ぎるんだよね」
「脂肪のところを食わなきゃいいじゃん。全然脂っこくないぜ。というかさ、そのハンバーガーのほうがよっぽど脂っこいと思うんだけど?」
横で一緒に、コカコーラを飲みながらウグルックを食べていたHの奥さん、Eも口をモゴモゴさせながらうなずいている。
「シンゴ、お前日本人なのにエスキモーの食べ物、なんでも食うんだな」とH。
「まあね。日本人はなんでも食べるんだよ。イヌだって食うんだぜ」
「まじで? どうやって食べるんだよ」
「茹でたり、グリルで焼いたりして、パンと一緒にケチャップとマスタードつけて食うね」
「へぇー…」
えらく複雑な顔をしているH。
「その料理、ホットドッグって言うんだけどね」
「なんだよ、本当にイヌを食うのかと思ったじゃねーかよ」
「韓国じゃイヌのスープ食べるらしいけど、日本じゃ食べないよ、今は」
Hは銃の腕もよく、猟に出ることも好きで、ネイティブフード好き両親に育てられたにも関わらず、何故かウグルックをほとんど食べない。
6月のウグルック猟の季節になる度に、
「ウグルック食べたか?」と聞くのが習慣のようになってしまった。
そんな彼も最近は、シーズンに一切れだけは食べるようになり
「やっぱり脂っこいよ。ちょっと脂を洗い流さなくちゃ」
と、コカコーラを飲みながらポテトチップを食べ始めるのだった。
「なあ、ポテトチップって、すごい油使ってるはずだぜ」
と、言うと、ソファででコカコーラを飲みながらテレビを見ているEもポテトチップを頬張りながら、激しくうなずいているのだった。
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