ただし、分配方法にはポイントホープに伝わる手法があるため、好き勝手に分配するわけにはいかない。
銛が脊椎にあたれば、一発でクジラが死ぬが、滅多にそういうことはないので、付近にいた他のクジラ組が続けて銛を打つことになる。
たとえば、付近にいたクジラ組3組の銛だけでクジラが絶命したとする。4組目が現場にたどり着いたとき、クジラは既にロープに縛られ海に浮いている。4組目は、ボートのパドルでクジラに触れる。そのことで4番目に銛を打ったと見なされる。以下、5番、6番目も同様である。
クジラを曳航中 |
それでもクジラを氷の際まで運んで来るのに、何艘ものボートで数時間かかることも多い。
各部の名称 |
クジラに印を付ける 右のピンク色の部分はマクタックを切り取った場所 |
銛を打った順番で、貰える部位「ニギャック(分け前)」が決まっている。
例えば3番銛は「カー(下顎の部分)」5番銛は「スィルヴィック(腹部)」など(右図参照)。
クジラが氷の際へ曵き寄せられ、ある程度印が付けられると、胴体の「ウアティ」と呼ばれる部位から表皮(マクタック)の一部が切り取られ、その場で茹でられて、作業している人たちに振る舞われる。
そして滑車とロープを使ってクジラ氷上へ引き上げ、クジラに付けられた印に従って解体を勧めていく(引き上げ、解体についてはそのうち)。
2013年6月、50フィート(15m)ほどの巨大なクジラが捕れた。我々のクジラ組は、5番目にクジラに触れたので(クジラにたどり着いたとき、既に絶命し曳航がはじまっていた)、我々のニギャックはスィルヴィックとなった。
猟期も終わりに近い6月、氷は薄く、クジラを引き上げるたびに、クジラの重みで薄い氷が割れ、解体は難航した。
マクタックを剥ぎ取り、クジラを少し軽くしてから引き上げを試みたが、相変わらず氷は割れ続ける。
次第にクジラ周辺の氷は危険な状態になり、結局一部のマクタックと肉しか回収できなかった。そして我々のニギャックは最後まで切り取ることはできなかった。
そんな状態でも、一番銛を打ったクジラ組のキャプテンから、町の各戸、猟に参加したクジラ組のキャプテンにマクタックと肉が配布された。
キャプテンに配られたマクタックと肉は、さらにそれぞれのクルーへと分配された。
ポイントホープでクジラが捕れれば、小さいクジラであっても、何らかの理由で肉が全て回収できなくても、町中の人たちがマクタック、肉を得られるようになっている。
0 件のコメント:
コメントを投稿