5月31日午後、元キャプテンから呼び出しがあり、彼の家(部屋が広いので作業をしやすい)のリビング、キッチンに大きなビニールシートを敷きつめ、肉を切るためのベニア板やダンボールを運び込む。キャプテンは仕事に出ていていない。
元キャプテンと若いクルーと一緒に作業をして、ミキアック作りの準備完了。
キャプテン仕事より帰宅
「明日の準備しなくちゃなあ」
「さっきTとやって終わってるよ」
「あ、そう」
なんだかやる気ないな。
6月1日、13時、に集合しミキアックを作り始める。キャプテンは仕事で留守。ミキアック作りの達人、元キャプテン奥さんを中心に作業は進む。
17時過ぎ、仕事帰りのキャプテンがちょっと顔を出すものの、そのまま家に帰ってしまう。
「キャプテンはどこ行ったんだ?」
一通り終了し、晩飯を食べながらつぶやくと
「そうなんだよなあ」
と元キャプテン。
1週間ほど前に発作で一度倒れたキャプテン妻は、無理をしないよう言い聞かされていたが結構頑張っていた。
81歳のIばあちゃんも休みつつも延々と作業を続けていた。
日曜日、ベッドルームから大ゲンカの声。カグロックまであと1週間しかないのに何をやっているんだか。いたたまれたくなり、やることもないのに物置へ避難。
ミキアック作り、ほとんど手伝ってもらえないんだもの、奥さん怒るよなあ。
しばらくして家に戻ると、どうにか仲直りはした様子。
娘曰く、たまにこういう喧嘩するらしい。
家主が仕事中に、自分にできることはじわじわと進める。
スィクパン(薪とともに脂肪を燃やすストーブ)用の古いストーブ、網が剥がれてひん曲がっていたので溶接してみる。自分一人でやる溶接は初めて。調整に失敗して網を焼き切ったりしたものの、どうにか修理完了。
そのストーブ用に集めてきた薪用の流木を電動のこぎりで切りそろえる。
アバラック切断用の大型ナイフの柄についた汚れを落とし、刃を研ぎあげる。
冷凍庫に切り分けて保管してあったアバラック(尾びれ)を5日ほど前に引っ張り出す。隣の家の物置に置き、表面に霜が付いたり結露で濡れたりするので朝晩各1回両面を拭く。
ユーカック(温かい飲み物)用に大きなバケツ2つに雪を集めてくる。溶けたら雪を追加。
などなど。
本番数日前
「だんだんナーヴァスになってきてるだろう?」
「そうだなあ」
キャプテンになって初めてクジラを捕った。さらにこの年最初のクジラを捕っているので、カグロックの際は、まず最初に話をしなくてはならない。
「喋ること紙に書いといたらどうだ?」
絶対にやらないとは思っているけれど、一応助言。
アバラックを配るキャプテン |
そして本番。
キャプテン、思いの外しっかりと、そして堂々と、神に対して、人々に対して、感謝の言葉を語ったのだった。
アバラックを配っているときに「シンゴ!」と名前だけ呼ばれた。
アバラックを受け取り、ハグしつつ「ありがとう」というと「愛してるぜ」「オレもだ」。
一瞬涙が出そうになった。
3日目の夜。体育館での踊りと肉やマクタックの配布が終わり、車へ向かう道すがら
「ありがとう、H」
というと、なんだか都合が悪そうな、はにかんだような笑顔をよこしただけだった。
結果的にほぼ元キャプテン夫妻の主導で進んだカグロックだった。
学ぶべきことはまだまだたくさんあるはず。
まあそのうち独り立ちできるだろうとは思うけれど。
応援してるぜ。
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