かつては質素な棺に入れるか直接埋葬していたのだろう。古い墓の上には草が生い茂っているものもある(近年、気温が上がってきたため、背の高い草も増え、墓地や普通の場所の違いがよくわからなくなってきている)。
今は豪華な棺に入れて埋葬しているので草が生い茂ることはないが、親族の人々が造花をたくさん置くことがあるので、花が咲き乱れている墓も多い。
滞在中にほぼ毎回葬儀がある。知った人も多く、猟に出ていてる場合などを除き、なるべく出席するようにしている。
人々は普段着のまま教会に集まり、亡くなった人を偲んで賛美歌を歌い、聖書を読み、時に思い出を語り、笑いが起きることも。
日本のような細かいしきたりは一切なく、派手な服はダメ、香典は多すぎても少なすぎてもダメ、ということはない(こちらに香典という風習はないが)。
どんな格好をしていようが、どんな状態だろうが、故人を偲ぶことに関係はないと思う。
基本的に豪華な棺は既製品を購入するが(アンカレジから飛行機で送られてくる)、それ以外はほぼ手作り。そのため墓標の十字架でさえ、親族の家で作られる。
太い材木を十字に組み、紙やすりをかけて表面を滑らかにし、電動ルーターで文字を刻む。それだけ。
古い墓標は朽ちていて誰のものかわからなくなっていたりするが、墓標なんてこれでいいのだろうなと思う。石で永遠に残す必要はあまり感じない。
木枠を入れ、墓穴を掘る |
掘れば掘るだけ崩れてくるため、棺がすっぽりと収まる大きさの枠を作り、それの内側を掘っていく。
5月上旬くらいまで、まだ墓地内に雪が積もっている。地面は表面から2〜30cmは凍りついていてシャベルだけでは掘り起こせない。
その昔は、暖かくなって地面が溶けるまで遺体を墓地の脇に安置しておいたそうだ。
雪を除くと、凍った地面が現れる |
「みんなで小便すれば、すぐ溶けるぜ」
などという、そこへ埋葬される人に対する敬意も何もなさそうなひどい冗談を言いながら、男たちは穴を掘り続ける。
重機で一気に掘ることも増えた |
教会での葬儀が済むと、棺はトラックに乗せられ墓地へと向かう。
前日に掘られた穴に安置された棺は、祈りを捧げられた後、十字架を立て埋葬される。十字架は町の方向(東)を向いている。頭は十字架の方に向けて(西)。
小雪の舞う中、誰かの歌う賛美歌が妙に染みてくることもあった。
仲の良かった友人の埋葬がほぼ終わり、感慨にふけっているときに、突如晩飯の話を家人に大声で言われ、 一気に現実に引き戻されたこともあった。
いままでどれくらい掘るのを手伝ったろう。
いずれ人は死ぬのだけれど、やはり友人たちに会えなくなるのは寂しい。
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