2021/01/11

フィルム

 アラスカへ通い始めた頃はデジタルカメラなんてものはなくて、毎回、50本ほどのフィルムを持って出かけ、帰国して現像が終わるまで、どんな画像が撮れているのか、不安と期待でドキドキしていたものです。

1本のフィルムで36枚しか撮れないので、1枚1枚を丁寧に撮っていたためか、意外と良い写真がたくさんあるのです。
今、デジカメでシャッターを押しまくっている写真は、まさに「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」的な写真になってしまっています。

以前はフィルムスキャナーを持っていて、思い出したようにフィルムをスキャンして印刷したりしていたのですが、読み込みにえらく時間がかかり、読み取った画像の色合いが微妙、 ピントも微妙、フィルムにゴミがついてしまったり、処理に時間がかかるため、めったに使わなくなってしまい、最終的には処分してしまいました。

さて
カメラのレンズの先端に取り付けて、フィルムをコピーするためのアダプターなるものを売っていることは知っておりました。なんとなく、試さないまま、何年も経過。
よく考えてみると、必要な機材はほぼ揃っているし、古くからのコピーアダプターなら、それほど高いものではないので、試してみて損はなかろうと、重い腰を上げたのでした。

とりあえず、2001年のフィルムの一部を読み込んでみました。

ウミアックでクジラを追う
この年、初めて実際にクジラの猟に参加。
クジラがはるか彼方に現れ、ウミアックがクジラを追い始める。寒さを忘れ、シャッター音でさえクジラに聞こえてしまうのではないかというくらいの緊迫感。
ドキドキしながら猟の行方を追い続けたことなど、さまざまな思い出が蘇ってきます。


クジラ祭りにて

クジラ祭りへの参加は2回目ですが、この年は主催者側では無かったこと、2回目ということもあり、ちょっと余裕を持って写真を撮れたのだと思います。
この写真は、自分にとって、一番好きな写真の一つ。
お年寄りたちはすでに他界してしまいましたが、子供たちは成長し、既に母親となっている子もいることでしょう。
右端の女の子は、現在25歳だそう。自分の幼い頃の写真を見ることができたと、たいそう喜んでもらえました。


アヴァラックを配るキャプテン

この人は、クジラ組のキャプテン、Henry Nashuukpukという方。
ポイントホープへ通い始めた頃から、夫婦でとてもよくしてくれて、食事をご馳走してくれたり、猟の話をしてくれたり。孫や子どもたちには厳しい感じでしたが、客人には奥さんとともに、とても優しく接してくれました。大きな声で喋り、朗らかに笑う陽気な奥さんは、この数年前に他界。
この年が、彼にとっての最後のクジラとなりました。この後、キャプテンを引退。
数年後、彼も奥さんの元へ旅立ってしまいました。
彼が亡くなるひと月ほど前。日本に帰る前に、彼の元に挨拶へ行きました。
日本食が食べてみたいな、と言うので
「来年、日本の食べ物を作ってあげるから、必ず元気になってね」

末期の癌で、自宅で最後を過ごすために帰ってきていた彼。
翌年会えることはない、ということはわかっていました。
彼の家を出てから、自分は何を言ってるんだろうと、思い切り落ち込んだことを覚えています。

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