2013/07/10

野生の肉

エスキモーは生肉ばかり食べていると思っている人がいるかもしれないが、ポイントホープの場合、生肉はほとんど食べない(昔は食べたのかもしれないが)。
それなりに加工したもの、すなわち凍らせたもの、乾燥させたもの、あるいは熟成させたものを食べることが多い。

地域によって食べる動物の種類がことなり、あちらの町では普通の食べ物も、こちらの町では食べることの無い物だったり、アラスカの中でも地域差は大きい。

例えば...
セントローレンス島という、ベーリング海に浮かぶ島へ行った人。
「コーク(凍った肉)を出されたんで食べたんだよ。あとからセイウチの肉だって聞いて、気持ち悪くなっちゃって...」
ポイントホープでは、セイウチの肉は必ず茹でて食べるので、こういうことになる。

アンカレジで、ポイントホープ以外のどこか遠くの町から来たエスキモーの人たちの食事に招かれ、ポイントホープでは食べることの無い種類のアザラシの料理を出された人。
「そのアザラシ食べたの? どんな味だった?」
「そんなわけのわからないもの、食べるわけないじゃない」
違う種類のアザラシは「わけのわからないもの」になってしまう。
日本人から見れば、アザラシなんてどれも一緒だろう、と思うのだが、かなり違うものらしい。
ちなみにアゴヒゲアザラシとゴマフアザラシでは、味も肉質も全く違うので、やはり種類によって味は違うのだろう。

ポイントホープの人たちが、内陸の町の親戚の家に出かけた。
ある日、親戚一家は出かけてしまい誰もいない。腹が減って来たものの、冷蔵庫に肉があるのみ。
「この肉、なんだろう? アザラシのようだね」
「じゃスープにでもしようか」
ということでスープを作って食べていると、親戚一家が 帰って来る。
一緒にスープを食べる。
「ポイントホープでも、この肉を食べるんかね?」
「もちろん。海で捕って来て食べてるよ。おいしいよね、この肉」
「ほう、ポイントホープじゃ、これ、海にいるんだ」
「え? アザラシじゃないの?」
「これ、ビーバーだよ」
「・・・」
そう、内陸なので、アザラシはいない。
散々食べたあと、ビーバーと知らされて、しばし呆然としていたらしい。

ポイントホープの人たち、食べ慣れないもの、変わった物はあまり食べたがらない割に、日本から持って来た、スルメや煮干しは大好物だったりするので、食べる食べないの基準がどこにあるのか、未だ謎である。





0 件のコメント:

コメントを投稿