昨年のカグロック(クジラ祭り)の際、みんなの前で話をしていたのを聞いたのが、自分にとって最後の説教だった。
この町のキャプテンのほとんどは、キャプテン引退後数年で人生も引退してしまう。 色々な意味で引き際がわかっているのかもしれない。
イラジじゃの葬儀にて、歌う人たち |
何か行事の時は、必ず最初に祈りを捧げるのもイライジャだった。
でも、今日は違った。
説教をしているはずのイライジャは 棺の中に横たわり、代わりによその町からやって来た白人の牧師が何か話をしていた。
トラックに乗せられた棺 |
「どこからかミキアックの匂いがするな」
聞いたことのある声がするので振り返ると、満面の笑みのイライジャ。
ミキアックとは、クジラの肉とマクタック(皮の部分)などを使って作った食べ物の名前。そのときはクジラが捕れる前なので、ミキアックがあるわけもない。
そう、自分のエスキモー名はミキアック。彼はいつも「ミキアック」と呼んでくれていた。
この2ヶ月、ポイントホープではイライジャを含めて2名の牧師が亡くなった。
墓地へ向かう車列 |
イライジャも夫婦で、素敵なダンスを踊っていた。
人は年を取り、人生を全うしてこの世から去って行く。それはわかっている。でも、いつもそこに立っているはずの人がいない、というのはとてつもなく寂しいものだ。
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