北西海岸のトリンギットインディアンの間では、創世神話に登場し、ワタリガラスの家系というものがあるほどで、彼らにとってワタリガラスは非常に重要な存在になっている。
ポイントホープにもワタリガラス(トゥルガック)は多数生息していて、電線の上、屋根の上で「カポン、カポン」と不思議な声で鳴いている。
真冬の極端に寒い時期であっても餌を探して飛び回り、クジラの解体が終わった残骸を食べに氷の上に飛んで来る。一年中寒い北極圏で暮らしている非常に強い鳥である。
ポイントホープにもワタリガラスに関する伝説はあったはずであり、かつて、著名な写真家H氏(故人)が、ワタリガラスに関する伝説を求めてポイントホープにやって来たこともある。
しかし、キリスト教精神が根底にまで染込んでしまっているポイントホープの人たちにとって、キリスト教と関係のない、どちらかと言うと多神教に通ずるような伝説は、だいぶ以前に廃れてしまっていて、大した成果を得られなかったようだ。
あるとき、ある日本人がやってきて、しばらくポイントホープに滞在していた。
敬虔なキリスト教徒であるPと話をしていると、
「ワタリガラスがエスキモーの祖先であるという話を聞いたことがありますか?」
と、その日本人が質問した。
もちろん
「そんな話は聞いたことが無い」
という答え。
たとえ聞いたことがあったとしても、敬虔なキリスト教徒であるPは、自分たちの先祖はアダムとイブであり、ワタリガラスであるなんてことは、絶対に認めないはずだ。
「ワタリガラスが我々のご先祖様だったとして、なんでご先祖様はゴミ捨て場でゴミをあさってるんだ?」
とP。
ポイントホープの海岸近くには、町のゴミを集めて露天で燃やしている巨大なゴミ捨て場があり、常にワタリガラスやカモメが群れている。
海岸沿いの物見櫓の上のワタリガラスの親子 |
と答えてみたけれど、大昔、人々は獲物を探して旅を続けていて、ホームレスなんて概念は無かったはず。もちろん今のような巨大なゴミ捨て場も無かった。
ポイントホープのワタリガラスの伝説を知る方法、それは本屋さんでエスキモーの伝説の本を探すか、図書館で古い文献を探すこと。
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