2012/12/20

ワタリガラスは伝説

北米の先住民の間には、ワタリガラスと言う大型のカラスが登場する伝説が数多く存在している。
北西海岸のトリンギットインディアンの間では、創世神話に登場し、ワタリガラスの家系というものがあるほどで、彼らにとってワタリガラスは非常に重要な存在になっている。

ポイントホープにもワタリガラス(トゥルガック)は多数生息していて、電線の上、屋根の上で「カポン、カポン」と不思議な声で鳴いている。
真冬の極端に寒い時期であっても餌を探して飛び回り、クジラの解体が終わった残骸を食べに氷の上に飛んで来る。一年中寒い北極圏で暮らしている非常に強い鳥である。

ポイントホープにもワタリガラスに関する伝説はあったはずであり、かつて、著名な写真家H氏(故人)が、ワタリガラスに関する伝説を求めてポイントホープにやって来たこともある。
しかし、キリスト教精神が根底にまで染込んでしまっているポイントホープの人たちにとって、キリスト教と関係のない、どちらかと言うと多神教に通ずるような伝説は、だいぶ以前に廃れてしまっていて、大した成果を得られなかったようだ。

あるとき、ある日本人がやってきて、しばらくポイントホープに滞在していた。
敬虔なキリスト教徒であるPと話をしていると、
「ワタリガラスがエスキモーの祖先であるという話を聞いたことがありますか?」
と、その日本人が質問した。
もちろん
「そんな話は聞いたことが無い」
という答え。
たとえ聞いたことがあったとしても、敬虔なキリスト教徒であるPは、自分たちの先祖はアダムとイブであり、ワタリガラスであるなんてことは、絶対に認めないはずだ。
「ワタリガラスが我々のご先祖様だったとして、なんでご先祖様はゴミ捨て場でゴミをあさってるんだ?」
とP。
ポイントホープの海岸近くには、町のゴミを集めて露天で燃やしている巨大なゴミ捨て場があり、常にワタリガラスやカモメが群れている。

海岸沿いの物見櫓の上のワタリガラスの親子
「ご先祖様はきっとホームレスだったんじゃないの」
と答えてみたけれど、大昔、人々は獲物を探して旅を続けていて、ホームレスなんて概念は無かったはず。もちろん今のような巨大なゴミ捨て場も無かった。

ポイントホープのワタリガラスの伝説を知る方法、それは本屋さんでエスキモーの伝説の本を探すか、図書館で古い文献を探すこと。

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