2012/11/17

ポイントホープの生活 その2

ポイントホープの夏、だいたい6月下旬から8月中旬にかけてでしょうか。ツンドラの雪はすべて溶け、花が咲き乱れ、海の氷も全くありません。
風のない晴れた日には、気温は20度を越えることもあり、そんな日は、みんな短パンとTシャツで外をうろうろしています。ただ、日が陰るとあっという間に気温が下がり、凍えるほどです。
学校の夏休みは、5月中旬から8月下旬まで。アメリカ本土と一緒なのかどうかはよくわかりません。
白夜の真っ最中なので、子供たちは夜通し遊び、昼間寝るような暮らしをしています。日本だと規則正しい生活がどうのこうのと学校も親もうるさく言うのでしょうが、こちらでは特に何も言いわず、子供の好きにさせています。
冬休みはクリスマス休暇なので、休みは新年を含めたそのあたり。さほど長くないと思います(冬休みのことはよくわかりません)。
この時期、冬至の前後は極夜、一日中日が昇らない季節なので、家にこもっているよりは、学校へ行っていた方が気が紛れるのでないかと思います。

学校では、給食が出るので弁当は持って行きません。給食の詳しいメニューは知りませんが、ハンバーガーとフライドポテトなどが出ることもあるそうです。
猟で遠出をする場合や、海岸でウグルック(アゴヒゲアザラシ)のピーラック(解体)を行う場合などは、弁当を持って行くことがあります。
カリブー猟など遠出の場合の弁当はハムとチーズを挟んだサンドイッチが多いです。冷凍庫にマクタック(クジラの皮)やアヴァラック(クジラの尾びれ)などがある場合は、持って行くこともありますが、これは弁当と言うよりもおやつの代わりかもしれません。
ウグルックのピーラック(解体)では、前の晩の残り物などをタッパーウェアなどの入れ物に入れて持って行くことがありますし、誰かが作った暖かい食べ物を鍋のまま持って行くこともありますが、これを弁当と呼んでいいのかどうか。クジラ祭り(カグロック)で貰って冷凍庫に保存しておいたミキアック(熟成させたクジラの肉)を持って行くこともよくありますが、これもまた弁当と言っていいものか。
ウグルックのピーラックでは、一度に何頭も解体する場合があり、ガスコンロと鍋を持ち込んで、その場で解体したばかりのウグルックの肉や腸(イガロック)を茹でてたべることもあり、こんなときはピクニックをしている気分になります。

空気は乾いているので、普通に市販されている毛皮類は家の中にぶら下げておいても特に問題はないとは思いますが、彼らが自分たちで捕った動物から剥いだ毛皮は、化学的な鞣し(なめし)加工がされていないので、すぐにカビが生えたり痛んでしまいます。なので、そういった毛皮で作ったジャケットなどは、外気温とたいして変わらない、外の物置に保管してあることが多いです。また、マクラック(毛皮のブーツ)などの小物は冷凍庫に保管している場合もあります。
ちなみに、現在、手元にある自分のマクラックは、そのままだとあっという間にカビだらけになってしまいそなので、冷蔵庫で保管しています。
日本人の友人が、グリーンランドのエスキモーに作ってもらった毛皮のジャケットやブーツを持っていますが、それらは防虫剤をたっぷり入れたプラスチックの箱で保管しているそうです。

今まで書いて来た文章を見てお気づきかと思いますが、エスキモー語(イヌピアック語)の名称や行為がそれなりに出て来ています。また、このブログ内に「単語集」としてまとめてある単語、これらは日常的に使われているエスキモー語の単語です。彼らが普段使っている言葉は英語なので、英語の中にエスキモー語が散りばめられていると言った感じでしょうか。
1960〜70年代、学校でエスキモー語を使うことが禁止されました(かつて日本が朝鮮半島で行ったことと同じ理由でしょう。ちょうどベトナム戦争の頃で、先住民の人たちも徴兵されて、ベトナムへ派遣されていました)。
その結果、今でも日常会話としてエスキモー語が喋れる人は、60歳代以上の人たちだけとなってしまいました。
現在は、学校でエスキモー語や文化を教える授業が行われており、語学学習で有名な黄色い箱の「ロゼッタストーン」シリーズの「イヌピアック語」版なんてのも出てきましたが、少々遅かったような気がします。

大統領選挙の仕組みはややこしくて、今ひとつ理解していません(アメリカ合衆国の大統領選挙について詳しく知りたい人は、Wikipedia等を参照してください)。
アメリカ合衆国の国籍を持っていれば投票権はありますが、投票したい人は「選挙人登録」というのを自分でしなくてはなりません。果たして選挙人登録をしている人がポイントホープにどれだけいるかわかりませんが、ポイントホープにもいわゆる「町役場」に投票所が設けられていたので、投票する人はいたのでしょう。

アラスカは大統領選挙人が3人と、選挙人が全米で最も少ない州の一つです(詳しいことはネットで調べてください。書いていて良くわからなくなってます)。人口も少なく、選挙する上で、それほど重要な州ではないので、遊説があったとしても、後回しになるでしょう(大統領がアラスカを訪れたと言う話自体、あまり聞きません)。

長い余談ですが、前回、民主党のオバマと共和党のマケインとの選挙の際、共和党の副大統領候補でサラ(セイラ)・ペイリンという女性がいました。地元アンカレジの元テレビリポーターで、元アラスカ州知事だった人です。
民主党やマスコミはスキャンダルを探して、彼女を追い落とそうとしていましたが、テレビ演説などで、意外と物を知らないことをさらけ出してしまい、自爆していました。
マスコミが彼女のスキャンダルを探した結果、高校生の娘が未婚のままボーイフレンドの子供を妊娠している、といううことを見つけ、ネタにしていました。
アラスカの、特にエスキモーの間では未婚の高校生の母は珍しいことではないので、何がスキャンダルなのだろう、なぜこんなどうでも良いことを、大々的に報道しているんだろう、と自分は不思議に思っていました。
サラ・ペイリンの旦那さんは、ユピックエ・スキモーという先住民で、二人から見ても、なぜそんな普通で、子供ができると言う嬉しい出来事がスキャンダルネタになるのか不思議だったことでしょう。
不思議なことついでに言えば、日本での報道では、彼女の旦那は「イヌイット」だ、としているところが多かったこと。
これは、実は完全な間違えで、ユピック・エスキモーは民族学的にはイヌイット語族ではないので、イヌイットではないのです。彼が日本でのこの報道を知ったら、きっと憤慨していたことでしょう。

さてさて、質問に簡潔に答えればいいことを、長々だらだらと書いてしまいました。
今のところ、質問内容はほぼ網羅したと思いますが、答えが足り無いかもしれないですし、新たな疑問が湧いて来るかもしれません。
いずれ質問がたまれば、また、長々だらだらと回答させていただきます。

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