2012/11/14

ポイントホープの生活 その1

結構な数の質問があるようなので、回答も兼ねたポイントホープの生活のお話し(その1)。

かつて、キリスト教が入ってくる以前は、シャーマンが生活の中心にあったようです。
白人の捕鯨者とともにキリスト教が入ってきて、教会も建てられました。これが100年以上前の出来事。
土の家に住みながら、日曜日には町外れに建てられた教会へと通うようになりました。
そして今ではほとんどの人がキリスト教徒で、さらにキリスト教原理主義という、相当信心深い人たちも多く、その人たちによって、シャーマンは全否定されてしまいました。かつて、お年寄りの中には、シャーマンの話をしてくれる人もいましたが、今ではシャーマンはよくない、という話ししか聞きません。
そんなわけで、クリスマスに限らず、キリスト教のお祝い事は必ずお祝いします。ですからクリスマスツリーの飾り付けも欠かしません。
一番近くに生えている針葉樹の高木は、ポイントホープから数百キロは離れているので、生木のクリスマスツリーはなく、日本でもおなじみの市販のプラスチックのツリーを使います。家の周りに電飾を飾る家も多く、クリスマスに飾り付けた電飾を春先にようやく外す、なんてこともざらです(春先は点灯していません)。

ガソリンは町に一軒あるガソリンスタンドで買えます。 ガソリンを使うのはホンダだけでなく、自動車(ピックアップトラックが多い)、海での猟に使っているスピードボート(モーターボート)、スノーマシン(スノーモービル)の燃料もガソリンですので、ガソリンは必需品です。ガソリンスタンドで売っているものは、レギュラーガソリン、軽油、灯油、プロパンガス。
年に一度、夏に船でまとめて運び込んで備蓄しています。そういう状況なので、ガソリンの価格は、アメリカ本土と比べると倍以上します。

ガソリンを買うにも、銃の弾を買うのにも、生活するためにはお金が必要です。なのでほとんどの人は何らかの職業を持っています。
アラスカの先住民の町には「ネイティヴ・コーポレーション」という、先住民の人たちが出資して作った会社があります。ポイントホープも「ティキガック・コーポレーション」という会社があります。
この会社は町のメンテナンスや店舗経営、アンカレジなどに系列会社を作り多角経営をしています。先述のガソリンスタンドで販売するガソリンなどの年間購入量、販売価格などは、ここで決めているようです。
この会社へ務めている人が、サラリーマンやOLといえばいえないこともでしょう。
日本のサラリーマンのように、平日は絶対に休まない、会社命、なんて人はいません。ちょっとでも自分の体調が悪ければ、すぐに仕事を休み、家族に問題があれば休み。残業って何? 休日出勤って何? それでも仕事は成り立っているようです。
他には、学校のメンテナンス、エスキモー文化を教える教師(一般の先生は、外部から派遣された白人が多い)などでしょうか。
ちなみに警察官も外部から派遣された白人です。毎日車でパトロールしていますが、町の人たちとの交流はほとんどないように感じます。
時々、仕事を持たない人がお金を得るためのようなアルバイトの募集がかかることがあります。以前、居候先の家主がやっていたバイトは時給35ドル(当時のレートで3500円ほど)。仕事内容は、道路に溜った水をポンプで排水している様子を終日確認(見ている)仕事。家主曰く「すげー疲れた」とのこと。

エスキモーは、日本人と同じ「モンゴロイド」です。ただ、この町の人たちは白人や黒人との混血が古くから進んでいて、明らかに黒人、明らかに白人だけど、エスキモーという人もいます。
展示している写真に写っているのは、主にエスキモー、時々黒人(アフリカ系アメリカ人)。東洋人である日本人は写真を写しているので、写っていません。
東洋人は他に、レストランを経営している韓国人が2名ほどいますが、猟や町の行事には滅多に顔を出しません。
そして、日本人。年に2ヶ月ちょっと毎年顔を出す日本人が一人いるだけで(自分です)、定住している日本人はいません。隣町のコツビューには日本人の子孫の「モト」さん一族がいますが(恐らく先祖は「ヤマモト」さん)。

どこの家にも衛星放送が見られるテレビがあり、日本のアニメもやっています。ドラゴンボールZや機動戦士ガンダムなどもかつて放映していたようです。今でも、ポケモンなど、日本のアニメをやっているようなので、それなりに流行っているのでしょう(アニメは良くわかりません)。
日本では懐かしのテレビ番組となっている番組も結構人気があり、「料理の鉄人」などは何度も再放送をしてましたし、「風雲たけし城」は未だ人気ありますね。
任天堂のゲームボーイシリーズは子供たちに人気で、ほとんどの子供が持っているのではないでしょうか。ソニーのプレイステーションも多くの家にあります。ただし、それらが日本のブランドだと理解している人たちがどれだけいるのか不明ですが。
野球好きだと、イチローら日本人メジャーリーガーの活躍をちょっと気にしているようですし、東日本大震災の際は、毎年やって来る日本人がいるので、CNNでの報道を気をもみながら見ていたそうです(友人宅にあいつは無事なのか、と何本も電話があったそう)。最近は多少は日本のニュースを気をつけて見ているのではないかと思います。
そしてポイントホープのひとたちは、他の町の人たちよりも、多少は日本のことを知っていると思います(自分が時々日本の話をするので)。

「その2」に続きます。

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